世田谷、目黒、品川区などが危ない? 東京の下水管危険エリアはどこか【八潮・道路陥没事故】

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「インフラ整備の予算がまったく足りない」

 本格的な検証はこれからだが、事故が起きた下水管について実施した県の点検整備は適切だったのか。国や他の自治体も、他山の石とすべきケースになりそうなのだ。

「インフラというものは、修繕なり更新なりをしない限り、老朽化で機能がどんどん低下して、さらには壊れて人命や財産に影響を与えるリスクがあります」

 そう指摘するのは、『朽ちるインフラ』の著者で、東洋大学大学院経済学研究科教授の根本祐二氏だ。

「主に日本のインフラは、高度経済成長期に集中的に投資が行われ整備されてきました。その恩恵を現代に生きるわれわれは被っている一方、老朽化の集中に直面してしまっています。名目GDP比でいえば当時は10%が社会インフラの整備に使われましたが、00年以降は約5%と半減してしまっている状態です。例えば、70年代には年間1万本もの橋を各地に架けていたんですが、今は年間1000本分くらいの予算しかない。仮に鉄筋コンクリート橋の耐用年数である60年を迎える30年に、架け替え工事の必要が生じても、予算がまったく足りないのです」(同)

「必要な更新費が蓄えられていない」

 インフラへの集中投資をすれば、いずれ多額の更新投資も必要になる。そのことへの備えを日本が怠ってきたツケが、今になって回ってきているというのだ。

「20世紀は高度経済成長の世紀で、日本が先んじて成功して世界各国が後追いしたことから、真っ先に日本がインフラの老朽化問題に直面しているのです。道路、橋梁、上下水道に港湾など、今のインフラを維持するために必要な平均更新投資額の推計は年間12.9兆円にも及ぶ。これは22年の時点での推計なので、工事単価の上昇で現在はさらに上がっていると思います」(根本氏)

 しかも今回の事故を起こした下水道に限ってみれば、課題は山積みなのだ。

「上下水道は利用者から料金を徴収して、支払われない場合にはサービスを止めることもできます。本来は料金の中に修繕、改修、更新の費用もちゃんと織り込んで、基金として積み立てておけば、必要な時に更新ができる仕組み。それが現状でまったく機能していません。これまでは公共インフラということで、政治的な理由からも料金が安く抑えられていたがゆえ、必要な更新費が蓄えられていないのです」(同)  

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