世田谷、目黒、品川区などが危ない? 東京の下水管危険エリアはどこか【八潮・道路陥没事故】
新品と同程度の耐久性を持てるようにする技術
むろん、都も手をこまねいているわけではない。23区を第1期から第3期までのエリアに分けて、耐震化も含めた下水道の更新工事に着手することになっている。
すでに千代田、中央、港区を中心とした第1期のエリアは75%の割合で再構築が完了しているというが、平均経過年数が44年という第2期のエリアはどうだろう。
こちらは北から板橋、練馬、中野、杉並、世田谷、目黒、品川、大田区といった住宅街の比較的多いエリアながら、工事着工は、4年先の2029年なのだ。
都の下水道局によれば、
「区部全域において、日頃から点検調査を行い、調査結果に基づき、下水道管の状況に応じた取り換えや補修などを実施しています」
あくまで「再構築」とは別に、日頃のメンテナンスにおいて万全の体制を取っていることを強調する。
元国土交通省技官で東京大学大学院工学系研究科特任准教授の加藤裕之氏に聞くと、
「他の自治体と比べて、東京都は掘り返さなくても古い下水管の中に補強材を入れて、新品と同程度の耐久性を持てるようにする技術を開発しています。たしかに経過年数でいえば老朽化の課題があるのは大都市部、特に東京都ですが、多くの地下埋設物に注意しながら改築工事が着実に進められるならば、将来的には不安も減ると思います」
普段使う道の「陥没リスク」はチェック可能
それでも安心できないという人の参考となるのが、都がホームぺージで公開している「東京都公共下水道台帳」である。
このマップを見れば、自分の家や職場周辺に通っている下水道の全てを把握することが可能だ。
マップには、下水管の太さや材質、マンホールの位置、合流部までもが記されているため、普段使う道に「陥没リスク」が潜んでいないか確認できる。地震など災害による崩壊の可能性も考慮すれば、避難路の検討にも使えるだろう。
こうした情報公開は、都以外でも全国各地の自治体で行われている。が、例えば名古屋市など、ウェブ公開を業者だけに限定している自治体もある。一般の市民は窓口でしか確認できないなど対応に差があるのが残念なところだが、震災のハザードマップ同様、下水道のリスクを把握しておけば、万が一の事態に備えることができよう。
先の加藤氏が言うには、
「普段は目に見えない部分だからこそ、注意すべきリスクがある。都市の地下には危険が潜んでいるという認識を、やっぱり市民の方に持ってほしいですし、地方の首長さんの中には、駅前開発とかインバウンド施設の建設など、それこそ目に見える地上のことは一生懸命やるけれど、地下の基礎インフラにはあまり興味がないという方が多いと思います。今回の陥没を教訓としてもっと関心を寄せてもらいたいですし、国には財政的な支援を強化してほしいですね」
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