「7人のイラン人」が梯子を作って塀を乗り越え…96年の旧東京拘置所「集団脱走」事件で「110番通報まで1時間以上」かかった驚きの内部事情

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110番通報まで1時間以上

 警視庁亀有署に110番が入ったのは午前4時22分。7人が外塀を乗り越えてから、実に1時間以上も経っていた。これでは、非常警戒線も張りようがない。

 現に、17日に偶然逮捕されたAによると、脱獄してから近くの路上でタクシーを拾って新宿に向かったが、所持金は無いので目的地で友人から借りて支払ったという。拘置所が110番した時にはとっくに7人全員が安全な場所に身を隠していたのだ。

 脱獄した7人のイラン人は24歳から39歳。古株は昨年5月入所のBで、17日に逮捕されたAは今年1月17日入所の新参者。脱獄に加わらなかった1人は2月に入ったばかりだった。

 彼らが入っていた北舎1階の雑居房には、房の外側に高さ88センチ、幅70センチの窓が2つある。内側のガラス窓は左右回転式の透きガラスで、その向こうに直径2.5センチの鉄棒が15センチ間隔で縦にならび、上下真ん中の位置に、同じ直径の鉄が横に渡されている。彼らは、右窓の中央右の鉄棒の下半分を金鋸様のもので切り取り、縦44センチ、横32センチの隙間を作って脱出した。

「切断は、音が紛れる昼にやっていたのでしょう。新しい建物の格子は材質を変えており、金鋸くらいでは切れないようになっているのですが」

 と、調査官は口惜しがる。

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 第2回【「全てが常套手段」なのに旧東京拘置所からの“集団脱走”に成功…96年にイラン人7人が企てた“緻密すぎる計画”の中身】では、元収監者や脱獄に関する識者の見解、そして逃げた7人のその後を伝える。

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