昨年破産「ガイナックス」の迷走を象徴する“トマト”とは…“アニメと農業”の意外な親和性

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ガイナックス、農業に参入していた

 ガイナックスといえば、1984年に設立され、「トップをねらえ!」「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」などの歴史的な名作アニメを手掛けたアニメ制作会社である。世界的なアニメ監督である庵野秀明など、数々のクリエイターが所属していたことでも高名であり、古参のアニメファンなら知らない人はいないだろう。

 アニメ史に残る名作を制作し、1990年代後半にはアニメファンの間でガイナックスはブランド化していた。ところが、2000年以降は経営陣の迷走ばかりが注目されてしまい、クリエイターが離れてしまったこともあって、2010年代には深刻な経営難に陥ってしまう。ついに、2024年6月5日に破産手続の開始が決定してしまった。

 ガイナックスの迷走を象徴するのが、2016年に突如、農産物の販売を始めたことである。それが“ガイナックストマト”だ。ガイナックスとトマト――あまりに異色すぎる組み合わせはアニメファンの度肝を抜いた。「エッ、あのガイナックスが野菜を売るの!?」「確かにガイナックスのロゴは赤いけれど、なぜトマト?」などと、ネット界隈にも衝撃が走った。

ガイナックストマトのお値段は

 しかし、ガイナックスは本気だった。兵庫県神戸市の「北野工房のまち」の一角に「ガイナックスマルシェ」なる販売店を設けたのである。オタクの町である秋葉原でも、『エヴァ』の聖地である箱根でもない。JR三ノ宮駅の北側に位置し、神戸有数の観光名所であり、歴史的な洋風建築や洒落た店が並ぶ街、北野なのである。

 店内ではもぎたてのトマトのほか、トマトジュースなど加工品も販売していた。当時の報道によると、糖度8の“ガイナックストマト8”は432円(税込)と、甘みが強い糖度9“ガイナックストマト9”は540円(税込)、そして、糖度9以上のトマトから大きさと形を厳選した“ガイナックストマト プレミアム”は648円(税込)である。

 上記の値段は、「ねとらぼ」などの写真によれば、パック詰めされたミニトマト数個の価格のようである。そして、ガイナックスは神戸スイーツなどの地元企業と協力しつつ、トマトを使った新商品の開発を行っていくと報じられている。少なくとも本気度は感じさせる取り組みであった。

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