「ソフトバンク」のパ・リーグ連覇に暗雲? 正捕手「甲斐流出」だけじゃない、他球団も指摘する“不安要素”とは
昨年は4年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたソフトバンク。日本シリーズではDeNAに敗れたものの、2位の日本ハムに13.5ゲームという大差をつけており、レギュラーシーズンでの強さは圧倒的だったことは間違いない。しかし、今シーズンもこの強さが続くかというと、疑問の声が多いのも事実だ。【西尾典文/野球ライター】
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【写真を見る】上沢直之投手の“脱法FA”にも賛否両論が飛び交っている
あまりに大きかった甲斐選手の存在
まず、最大の不安要素が、正捕手の甲斐拓也がフリー・エージェント(FA)で巨人に移籍してできた穴である。近年は複数のキャッチャーを併用する球団も多いが、ソフトバンクについては2018年から昨年までの7年間連続で甲斐が100試合以上スタメンマスクをかぶっており、絶対的な存在となっていたのだ。
ちなみに、昨年、甲斐以外に先発出場したのは、海野隆司の38試合と谷川原健太の3試合となっている。実績のある選手としては、2022年オフにFAでDeNAから獲得した嶺井博希がいるが、昨年はわずか4試合の出場に終わっており、6月20日に登録抹消されてからは一度も一軍昇格を果たすことができなかった。
不安要素は甲斐の移籍だけではない。長年、投手陣を支えてきた石川柊太もFA権を行使してライバルであるロッテに移籍。また、近年はFAで又吉克樹、近藤健介、山川穂高、メジャー帰りの有原航平、外国人選手のオスナら大型補強を繰り返してきたが、今年は、昨年主にマイナーでプレーしていた上沢直之を獲得したくらいで、静かなオフに終わっているのだ。
現役ドラフトで若手の有望株である吉田賢吾、交換トレードでセカンドのレギュラー候補の三森大貴も退団している。その代わりにともにDeNAでプレーしていた投手の上茶谷大河と浜口遥大を獲得しているが、この動きに対する疑問の声も多い。他球団の編成担当者はオフのソフトバンクの動きについて次のように話す。
相次ぐ育成ドラフト選手の退団
「甲斐の退団が大きな誤算だったことは間違いないですね。ただ、シーズン途中から甲斐がFA権を行使するという噂はありました。それでも引き留めることができなかったのは、下交渉などが後手に回ったということだと思います。あと上沢、上茶谷、浜口とここまで投手を獲得するとは思いませんでした。石川が抜けたというのはありますが、その穴を埋める候補になりそうな若手投手は少なくありません。それを考えると、獲得した3人も戦力になるか微妙です。一方、内野手はそこまで層が厚くないなか、三森をトレードで出したのには驚きました。日本シリーズで投手陣が打ち込まれて負けたことに対して、不安を感じ過ぎてしまったのかもしれませんね」
前述したように、上沢は昨年マイナーでの登板が大半であり、上茶谷と浜口もともに昨年は2勝に終わっている。昨シーズンと同じような内容であれば、一軍で投げるのも難しいのではないだろうか。
また、セカンドのレギュラーである牧原大成は、今年で33歳とベテランと言われる年齢となっている。今年2年目の広瀬隆太、ルーキーの庄子雄大らが後釜の候補になるが、まだ若くて実績もある三森を放出するというのは思い切った判断という印象は否めない。
そして、それ以上に気になるのが育成ドラフトで入団して、成長を見せていた選手の相次ぐ退団だ。左腕の三浦瑞樹、内野と外野のユーティリティプレーヤーである仲田慶介は昨年支配下に昇格。三浦は、ウエスタン・リーグで最優秀防御率のタイトルを獲得している。
しかし、オフには再び育成選手として契約を打診されたがこれを拒否。三浦は中日、仲田は西武にそれぞれ育成選手として入団したのだ。過去にも亀沢恭平(元中日)、長谷川宙輝(ヤクルト)らが、ソフトバンクの育成再契約を拒否して他球団に移籍して一軍の戦力となっている。三浦と仲田もそれに続く可能性も十分にあるだろう。選手個人にとっては良いことかもしれないが、ソフトバンクとしては、このような流れが続くことは望ましいことではないはずだ。
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