「備蓄米」を放出で「5キロ5000円」の緊急事態は解消されるか…農水省への風当たりが強まる一方、本当の問題は日本人の“貧困化”との声も
《コメ不足、価格高騰の原因は農水省》、《農水省に国民殺される》──。目下、農林水産省に対する怒りの声がXに殺到している。2月14日、政府が放出する備蓄米に関して数量などの入札概要が公表される予定だ。現在、東京都心ではコメ5キロの小売価格が4000円から5000円台と異常な高値にある。この価格がどこまで下がるのか、はたまた全く下がらないのか、大きな注目が集まっている。
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どれほど急激にコメの価格が上がったのか、改めて振り返ってみよう。総務省の「小売物価統計調査」によると、2023年には東京23区内でコシヒカリ5キロが平均2300円台で販売されていた。
2024年に入っても4月は2384円だったが、7月に入ると2600円台を突破。そこから急激に上昇する。農水省は「新米が出回れば価格は落ち着く」と楽観的な見通しを繰り返したが、11月には3985円、12月には4018円に達した。国民から悲鳴が上がるのは当然かもしれない。
農水省は備蓄米の放出を決め、「コメの価格を大幅に下げてほしい」という国民の切実な要望に応えているかのような姿勢を見せている。だが価格が実際に下がるのか、下がるとしてもどの程度なのかは未知数との指摘も多い。担当記者が言う。
「あくまでも農水省の見解ですが、昨年のコメは豊作だったことになっています。しかもコメの価格は高騰が続いているため、本来であれば順調に集荷され、新米が小売店に届けられるはずでした。ところが現実はあべこべで、年末の集荷量は前年を21万トン下回り、しかもその行方を農水省は把握できませんでした。これが“消えたコメ”問題と呼ばれ、備蓄米の放出と密接な関係があるのです」
コメの価格が下がらない可能性
農水省はコメが豊作だったと発表したが、関係者の間には不作説も根強い。同じように江藤拓・農林水産大臣の現状認識を疑問視する声も少なくない。
江藤農水相はコメが高騰している理由として「米は充分に供給されているのに、市場に出てこないのであれば、どこかにスタックしていると考えざるを得ない」と、卸業者や集荷業者がコメをため込んでいることを示唆した。だが本当に「スタックしている」のか、確たる証拠は存在しない。事実かどうかは断言できない状況なのだ。とはいえ──。
「備蓄米が放出されるのは、『高値で売り抜けようと考えていた集荷業者や卸が貯めこんでいたコメを吐き出させるため』です。決して『コメの小売価格を2300円台に戻す』ためではありません。限定的な放出でもコメは流通すると農水省が判断すれば、消費者が納得できる価格帯までは下がらない可能性もあります。江藤農水相は2月12日の会見で『流通を円滑化するために備蓄米の放出を行う』と断言。価格については『市場で価格が決まるべきものです』と、農水省は責任を取らない姿勢を明確にしました。備蓄米の放出に大きな期待を寄せていると、思わぬ肩すかしを食らうかもしれません」(同・記者)
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