下水道管だけではない「日本の危険なインフラ」 高速道路、橋、マンションが総崩れの危険
対策に着手できない危険な橋
だが、通行料を徴収できない道路はもっと深刻だともいえる。とくに橋である。2021年度末時点で全国に約73万本の橋があり、それらも多くは高度成長期以降に架けられたものだ。
2012年に発生した笹子トンネル崩落事故を受けて改正された道路法で、国や地方自治体などの道路管理者には、橋などを5年に1度点検することが義務づけられた。それを受けて2018年までに、6万6,354本の橋が5年以内に措置を講ずるべき状態にあると判定されている。
それから5年を経た2023年末の時点で、国交省や高速道路会社が管理する橋は、ほぼ対策がとられたようだ。しかし、73万の橋うち50万以上は地方自治体が管理する市町村道のもので、その場合は、必要な措置を講ずるのも簡単ではないようだ。それでも83%の橋は対策に着手されていたが、逆にいえば、17%は着手できずに放置され、とくに危険性が高い場合は通行止めにされるなどしていた。下水道管と同様、予算も人員も足りないため、手をつけられずにいるのである。
道路の陥没に続き、橋の崩落に人が巻き込まれかねない状況だといえる。しかも、少子高齢化の影響で税収が減り、今後も減る可能性が高い地方自治体は、これから橋をふくむ道路を維持するのが、ますます困難になる。「103万円の壁」の引き上げで地方税収が減少し、手取りは増えたが事故も増えた、ということにならなければいいが。
老朽化したマンションが廃墟になる
マンションも同様である。国交省によると、日本にはじめて民間のマンションが登場したのは高度成長がはじまったばかりの1956年で、その戸数は2023年度末までに700万を超えた。それらもこれから急速に老朽化する。築40年を超えるマンションは2023年末現在では135万戸だが、あと10数年で過半は築40年を超える。
老朽化したら建て替えるのか。しかし、建設費が高騰するなか、老朽化とともに高齢化した住人が建て替え費用を捻出するのは簡単ではない。では、建て替え時に床面積を増やして、余剰分を販売することで住民の負担を減らすのか。しかし、もう容積率を増やす余地がない場合もある。床面積を増やすことができたとしても、これから少子化が進んで住宅が余るなか、それは現実的な選択ではなくなっていくだろう。
結局、建て替えが進まなければ住人が少しずつ減って、やがては廃墟になるしかなくなる。そんなマンションがこれから全国にあふれかねないのである。
厚生労働省の人口動態統計(速報値)では、2024年11月までに生まれた子供は66万1,577人で、年間70万人を割ることが確実視されている。統計がある1899年以降、はじめて100万人の大台を割った(97万6,979人)のは2016年で、そのときの衝撃は大きかった。100万人を割るような年が続いたらどうなるのか、と不安になる人も多かった。ところが、もはや100万人など夢のまた夢、わずか8年でさらに3割も減少したのである。
これほどの少子化のなか、下水道に、高速道路に、橋に、マンションに……、むろん、それだけではない。私たちはインフラを維持できなくなる危険に直面している。それは八潮市の陥没事故のような不幸が、各方面で日常化するということである。
しかし、問題に気づいて直視しないかぎり、対策を講じることも、少しはマシな未来につなげることもできない。その意味で、いまなお転落した運転手の救助が難航している八潮市の事故を、無駄にしてはいけない。
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