フジ「スポンサー離れ」でヒット作ぞろいの“映画事業”はどうなる…「ドル箱」映画の続編は無事に製作できるのか

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看板番組の中止が

 引退した元タレント・中居正広氏(52)の女性トラブルに端を発した一連の騒動で、スポンサー企業が続々とCMを差し替え、差し止めるという事態に直面しているフジテレビだが、その余波は拡大する一方だ。

「フジの看板番組でもあり、4月に放送予定だった音楽特番『FNS歌謡祭』は中止が決定しました。夏のビッグイベントで、系列局も挙げて盛り上がる『27時間テレビ』も現状では制作が難しい状況になっています。さらに、看板ドラマ枠である月9(月曜午後9時)の7月期は、ロケ地や協賛の協力が得られず、撮影の危機に瀕しているといいます。大みそか特番として定番化していた『逃走中』も危ういのではないかという声もあがっています」(放送担当記者)

 通常、テレビ局は、遅くても2月下旬あたりまでに、4月の改編期から流す30秒の「提供CM」に出稿するスポンサー企業と契約を締結する。「提供CM」は半年単位で契約するケースが多い。つまり2クール単位となるわけだが、フジテレビは現状、4月期と7月期までの2クール分が埋まっていないとされる。スポンサー各社は、3月末を目途に発表される「第三者委員会」の調査結果を精査し、さらには世間の反応などを総合的に勘案して、CM出稿するかを決めることになる。

「CM枠を埋め、その広告費を番組制作に充てるという本来のサイクルが成り立たない。制作費が持ち出しになり、大幅な経費削減を余儀なくされそうです。開局以来、未曾有の危機ですが、おそらく、上層部はここまでの窮地に陥るとは想定していなかったのではないでしょうか」(同)

 フジ・メディア・ホールディングス(HD)の中核をなす同局だが、収益を担うのは主に「3本の柱」と呼ばれる部門だという。

「1本目は地上波、動画配信サービス・FOD、民放の無料動画配信サービス・TVerでの番組による広告収益。2本目は美術展などの各イベントの収益です。既に、この2本はCM差し止めやイベント中止などの影響を受けており、大きな打撃を受けています。そして残る3本目の柱も“かなり危ない”というのが局内の声で、このままだと、3本の柱が“共倒れ”になってしまいそうな状況なのです」(フジテレビ関係者)

 その3本目の柱とは、製作委員会に出資した映画事業の収益だ。

「もともとテレビに比べて映画製作はハイリスク・ハイリターンです。作品がコケた場合、注ぎ込んだ製作費が水の泡と消えてしまう。そのため、2000年代に入ってからビジネスモデルとしてスタンダードとなったのが『製作委員会方式』です。要は複数の会社が製作費を出し合い、儲けを配分する。そうすることで、コケた場合も各社のリスクを少なめに食い止めることができます。大規模上映の作品では、製作・配給会社を筆頭に、各テレビ局、その系列局、系列の新聞社、原作があればその出版社など、いわゆるマスコミ業界の関係企業が製作委員会に名を連ねます。テレビ局や新聞社が入ることにより、PR活動が大々的に展開できますが、やはり、テレビのPR効果は絶大です」(大手映画会社の宣伝担当者)

映画事業も先行きが見えず

 現在、フジが出資した劇場作品では、ヒットメーカーの福田雄一監督(56)がメガホンを取って山崎賢人(30)が主演を務めた「アンダーニンジャ」が公開中で、番宣CMが放送されている。さらにここに来て、中島健人(30)主演の「知らないカノジョ」(28日公開)、一昨年ドラマ版が放送された向井理(43)主演の「パリピ孔明 THE MOVIE」(4月25日公開)。そして、永野芽郁(25)主演の「かくかくしかじか」(5月16日公開)のCM放送がスタートしている。

 また、フジ・メディアHD・広報IR部発表のプレスリリース(5日付)によると、残り3作が年内公開を控えているが、その時期が決定していない。そして、同局の公式サイト内にある映画情報「フジテレビムービー」でも異変が見られるという。

「『劇場作品』の『公開中』のページには出資している作品が表示されるはずなんですが、スポットCMは流れているものの、配給元の判断でフジのサイトへの掲載はNGとなった作品があります。それもあり、昨年の秋ごろから映画情報のコーナーはほぼ更新されていません。この状況が続くようだと、フジが出資した作品であっても、フジでの番宣への協力を拒む芸能事務所や個人で活動するタレントが出てきてもおかしくないでしょう」(映画業界関係者)

 フジテレビは組織の中核となる「編成総局」の傘下に「編成局」、「バラエティ制作局」、「ドラマ・映画制作局」、「ビジネス推進局」、「アニメ事業局」、「DATA STUDIO」がある。映画事業を担っているのは「ドラマ・映画制作局」だが、同局員のみですべてをこなしているわけではない。

「フジの子会社である『FILM(FUJI IG LABORATORY FOR MOVIES)』がドラマ・映画の製作を手掛け、本体の収益に貢献しています。ここ数年の映画だと、長澤まさみさん(37)主演の人気シリーズ最新作『コンフィデンスマンJP 英雄編』(22年)、福山雅治さん(56)主演の『ガリレオ』シリーズ最新作『沈黙のパレード』(同)、人気作の続編『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』(23年)などです」

 フジの映画事業といえば、あの映画が真っ先に思い浮かぶ。13年から17年までフジの社長を務め、現BSフジ社長の亀山千広氏(68)が製作総指揮を手掛けた「踊る大捜査線シリーズ」だ。織田裕二(57)主演の人気ドラマシリーズの映画化だが、特に第2弾の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(03年)は興行収入173.5億円を記録。公開から22年経過した現在でも、邦画の実写作品では歴代興行収入1位の座に君臨している。

「昨年、『踊る』シリーズの最新作として、柳葉敏郎さん(64)演じる室井慎次が主人公の2部作『室井慎次 敗れざる者』と『室井慎次 生き続ける者』を手掛けました。『踊る』シリーズとしては12年ぶりの最新作でした」(同前)

 気になる興行収入は「敗れざる者」が18.9億円、「生き続ける者」が17億円。いずれも、ヒット作の基準である10億円を大きく超えた。そして、両作品に織田は出演しないかと思われたが、「生き続ける者」のエンドロール後のラストシーンにサプライズ的に出演。シリーズのファンを歓喜させた。その後、織田が主演する「踊る大捜査線 N.E.W.(以下、N.E.W.)」が26年に公開されることが発表されている。

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