日枝久氏を辞めさせるのが「非常に難しい」理由とは フジ元役員が明かす
「放送事業が丸ごと吹き飛んだとしても倒産することはない」
【前後編の後編/前編からの続き】
「あの人が居座るかぎり騒動は終わらない」――フジテレビ内部からは悲鳴にも似た声が聞こえてくる。あの人とは無論、日枝久(ひえだひさし)・取締役相談役(87)のことだ。その堂々たる豪邸については以前もお伝えした通り(関連記事【ただのサラリーマン社長だったのに…「土地だけで7億5000万円」 “フジテレビのドン”「日枝久」が住まう大豪邸】)。ここまで富と名声を得たのだから、いつ退陣しても構うまいに――というのは凡人の感想なのだろう。今のところまったく辞める気配はない。
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【写真14枚】ドラマに出てくる“お金持ちの家”そのもの! 「日枝久」が住まう杉並区の大豪邸
前編【「フジの社員は“文春ひどい“と騒いでいる」 フジテレビの窮地に「菅田将暉もドラマ出演を断った」】では、窮地に立たされるフジテレビ内部の声や、日枝氏が退陣しない背景について報じた。
このような状況下で、フジ・メディアHDは2025年3月期決算の見通しを大幅に下方修正。フジの上層部を青ざめさせる数字になっているが、それでも日枝氏が動じないのは、フジ・メディアHDの収益構造に理由がある
「フジ・メディアHDは今やメディア企業と言い切れるのか疑問符が付きます」
そう話すのは、公認会計士の川口宏之氏である。
「ホールディングス全体の売上高で見ると、8割近くがメディア事業収入ですが、営業利益でいうと、半分以上の54%が都市開発・観光事業なのです。観光事業を担うグランビスタホテル&リゾートでは、ここ2年連続で連結子会社化後の上期最高売上高と営業利益を更新しています。フジ・メディアHDはフジの放送事業が丸ごと吹き飛んだとしても倒産することはないでしょう」(同)
「本人が辞める気がない時に辞めさせるのは非常に難しい」
フジ・メディアHDは、日枝氏が代表を務めるフジサンケイグループの中核企業である。今回の件を受け、日枝氏がフジの取締役相談役に加えて、フジサンケイグループ代表の座も退けば、フジに対する逆風もある程度収まるかもしれない。
しかし、
「フジサンケイグループは法人ではなく、グループ会社を株で統治しているわけでもない、会社法には想定されていない組織なのです。そのため、フジの株主でも取締役会でも、はたまた外部の組織であっても、日枝さんを代表から退任させる権利はありません」(川口氏)
フジの元役員も言う。
「フジサンケイグループの代表には、その時々のグループ構成会社の社長会などで何となくイニシアチブを握っている人が就きます。そのため、辞めさせるシステムはなく、本人が辞める気がない時に辞めさせるのは非常に難しい」
フジサンケイグループ代表として君臨し人事を掌握する一方、フジでは代表権のない取締役でしかないから経営責任を問われることはない。これが日枝氏によるフジ支配の「要諦」なのである。もちろん、一朝一夕に形作られた統治体制ではない。彼はいかにしてそれを築き上げたのか。
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