「気分はもう内戦」の韓国 裁判所を襲撃で司法崩壊…“世界最高の民度”の現在は

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憲法裁を叩き壊せ

 2月5日には国家人権委員会のNO.2であるキム・ヨンウォン常任委員(次官級)が自身のFacebookに「もし、憲法裁判所が主権者である国民の意思に逆らって大統領を弾劾するなら、国民は憲法裁判所を叩き壊さねばならない」と書きこみました。

 キム・ヨンウォン氏は尹錫悦大統領によって常任委員に任命された元検事です。ここに至って、憲法裁判所に対する物理的な攻撃が呼びかけられたのです。さっそく、憲法裁判所への具体的な攻撃方法を教唆する投稿がオンライン上に広がりました。

 ハンギョレの「西部地裁に続き『憲法裁で騒乱』謀議…警察、投稿者を追跡=韓国」(2月10日、日本語版)は、投稿には「粛清」「刺殺」などの単語が使われており、警察が騒乱の事前謀議として捜査に乗り出したと報じました。

 2月10日、国家人権委員会は憲法裁判所など司法と捜査機関に対し「尹錫悦大統領の防御権を十分に保障し、不拘束で捜査せよ」と勧告しました。国家機関同士が保守と左派に分かれて抗争を始めたのです。

 なお、弾劾されて職務停止中の韓悳洙(ハン・ドクス)首相も2月6日、国会で「憲法裁判所が国民の納得する判決を下さねば、国民は分裂する」と述べています。韓悳洙氏の人柄から見て、憲法裁に圧力をかける、というよりも国論の分裂を心の底から恐れているのでしょう。

急激に膨らむ弾劾反対集会

――国論が分裂し始めたのですか?

鈴置:その通りです。図表「尹大統領弾劾に関する世論調査」をご覧ください。国会で弾劾訴追が可決される直前の2024年12月第2週の世論調査では、75%が尹錫悦大統領の弾劾に賛成でした。反対はたったの21%。

 それが1月第4週には59%対36%にまで接近したのです。なお、旧正月のため、2月第1週と第2週の調査はなく、第3週の結果は2月14日になるまで分かりません。朴槿恵大統領の弾劾当時、「賛成」が一貫して80%前後を占めたのと対照的です。

 賛否が拮抗するに連れ、集会の現場に繰り出す人々――ことに保守派の「熱量」が急速に上がっています。2月1日、釜山では弾劾反対を叫ぶ保守派が1万3000人(警察発表)も集まったと話題になりました。次の土曜日である2月8日には大邱に5万2000人(同)と跳ね上がりました。

 弾劾反対集会の多くは韓国で強い力を持つプロテスタント教会が主催しています。2月8日の集会では、保守の有力アジテーターが登壇して「尹大統領への支持率が60%を超せば、憲法裁は弾劾を100%棄却する」と露骨に司法に圧力をかけました。

 朝鮮日報の「プロテスタントと20・30代が合流 地域も全国化…勢力が拡大する反・弾劾派」(2月10日、韓国語版)が報じました。

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