義実家を毛嫌いし、僕を鼻血が出るまで殴った母…その“理由”を知って48歳男性は「うつ」になった

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家庭があるから自由に、という倒錯

 うつ病と診断され、半年間、休職した。入社3年目、25歳のときだ。生きる気力はなかなかわいてこなかったが、そろそろ短時間から出社してみないかと言われ、思い切って会社に行ってみた。

「みんな優しかった。3歳年上の晶子先輩が、『私もうつで休んだことがあるんだよ、知ってた?』と話しかけてくれて。なにくれとなく世話を焼いてもらって、彼女を頼りにしました」

 頼る気持ち、それを受け入れてくれるのを愛情だと錯覚した。彼は自分の気持ちをすべて晶子さんに話し、つきあいが始まった。ふたりは1年後に結婚したが、周りからは心配されていたようだ。当時、クリニックに通いながら自身の精神衛生についても勉強していた栄介さんは、周りの心配もじゅうぶん理解していた。それでも晶子さんと一緒にいたい気持ちが強かった。

「ただ、結婚したら僕は何か吹っ切れたような気持ちになったんです。支えてくれる人ができて、帰る場所ができて。家庭を大事にしようというよりは、自分には家庭という場があるのだから外でもっと自由になろうという方向に走ってしまった」

 晶子さんとの家庭を、自分が生まれ育った家庭のように思ってしまったのだろうか。彼は生まれ変わったように仕事に精を出し、人づきあいにも積極的になった。仕事のセミナーや交流会にも自ら進んで行くようになった。晶子さんは退職してパートで働きながら家をととのえ、彼に尽くしていた。そして「もっとふたりの時間を過ごしたい」という晶子さんの声は、彼には聞こえていなかった。

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 真っ向から食い違う、栄介さんの出生の秘密。記事後半では、大胆な行動によって明らかになる真相と、栄介さんをめぐる女性たちの愛憎を紹介する。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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