番組名をつけるなら「おじいさんだらけのフルボッコ長時間耐久レース」 生まれて初めてフジテレビを長時間観続けた「10時間会見」を振り返る

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 興味本位で観始めたら止まらなくて、というか一向に終わらなくて、まさかの10時間半。こんなに長時間、フジテレビを観続けたのは生まれて初めて。原稿に書くことはないと思っていたが、テレビ史に残る記者会見だったので、書くことに。どんな記者会見かというと、昭和に大磯ロングビーチで収録していたイベント型バラエティー番組風のタイトルをつけるならば、「ドキッ!! うっかり本心ポロリ! 刺激に配慮で乗り切ろうとするおじいさんだらけのフルボッコ長時間耐久レース記者会見」(フジ)みたいな。

 翌日、フジが映らない地方の友人から「記者会見の間、フジは普通に番組を放送してたの?」と聞かれたので、「16時過ぎに始まってCMなし、休憩1回、ぶっ通しで深夜2時33分まで会見を放送してたよ」と伝えた。普段NHKしか観ていない彼女ですら、「すご。観てみたかった」とのこと。

 そもそも、この一件の張本人と彼の番組に興味はなかったが、性加害は許すまじ。なぜ引退して逃げた? 結局はジャニーズ問題(性加害&異様な忖度)が諸悪の根源ではないの? テレビ各局がぬるいお手盛り検証番組をちょろっとやって済ませた罪も深いのでは?と、年末の週刊誌報道からモヤモヤしとったのだが、意外と世間は無関心で驚く。

 概要としては、女性に対する元アイドルの蛮行が発端。これにフジテレビの男性社員の関与と、社内の「性上納システム」が疑われ、港浩一社長ら幹部が1月17日に記者会見を開いたものの、クローズドな上にお粗末な内容で、猛烈に批判される。スポンサー企業は猛スピードでCMを差し止め。フジテレビで流れるのは、ほぼほぼACジャパンのCMのみに。なかやまきんに君、松重豊、嶋田久作&今井隆文、ゆうちゃみ、近藤真彦らが登場するCMが繰り返されている。え、マッチでいいの?

 つうことで、27日にやり直し記者会見を開いたわけだが、賛否両論。私自身は評価したい、すべての質問に答えようとした姿勢だけは(回答はまったくもって不満だが)。SNSではたたかれている記者もいたが、「記者クラブの幹事社が仕切る、行儀のいい茶番記者会見」の方が気持ち悪いと思うのよ。ま、質問ではなく、謎の昔話と説教を延々とするおじいさんジャーナリストには確かにへきえきしたけれど。あ、あと、フジテレビが大嫌いなんだなと思われる人が、ネチネチと質問をしていたっけ。

 空気が変わったなと思ったのは「対応する経営陣が全員男性ですよね? 女性の立場になって考える人が皆無」「怒りを感じていないのか?」「なぜ雑誌協会には記者会見の事前申請の案内をしなかったのか」「いったい誰を守っているのか」「性加害の罪の重さを理解しているのか」という主旨の質問。この件に無関係なフジテレビの中の人、隠蔽(いんぺい)とほぼ断言した社会部記者や、会見後に「自業自得です」と吐き捨てた報道局編集長も記憶に残った。怒り、だ。

 他局にも戦々恐々な人がいるはず。お台場だけの話とは思えないんだけどなぁ。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2025年2月13日号掲載

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