前歯を失い、パンチドランカー、双極性障害も… 元・東大生格闘家「巽宇宙」の異色すぎる半生
巽宇宙(たつみ・うちゅう)という、インパクトのある名前をご存じの方もいるかもしれない。れっきとした本名である。今年53歳になる巽さんは、東京大学大学院に在学中に総合格闘技団体の修斗からプロデビューという、経歴の持ち主だ。東大と格闘技という文武両道を進む彼は、当時、世間の注目を集め、メディアではその華々しいキャリアが紹介された。
現在は、うつの状態と躁状態を繰り返す双極性障害の患者で、その経験を『元東大生格闘家、双極性障害になる』(日本評論社)に綴った。仕事を幾度も休職し入院したといった闘病について明かした前回に続き、これまでの人生を振り返ってもらった(全2回の第2回)。
宇宙飛行士を目指した子ども時代、もっと強くなるため東大少林寺拳法部に
巽さんのキャリアを語る上で欠かせないのは、やはり学歴だろう。東京大学医学部保健学科を卒業し、同大学院教育学研究科体育科学コースを修了。子どもの頃から、勉強が得意だったという。
「親が厳しかったのもあるけれど、小4から中学受験を考えていました。結局、受験は失敗したのですが、中学時代はテストで毎回100点とれと親から言われていました。高校は桐蔭学園高等学校の理数科に進学しました。理系に進もうと思ったのは、宇宙飛行士になりたかったから。1972年生まれなのですが、ちょうど同じころにアポロ宇宙計画があったんです。親はきっとロケットが月面着陸をするのを見て『宇宙』という名前を付けたのでしょう。本当は日本で最初の宇宙飛行士になりたかったのです。
一浪して東大に入学したばかりの頃が、もっとも優秀でしたね。全国模試で5位とか、偏差値も95を取りました。浪人はしましたが、成績が良かったので予備校代が全額免除だった。当時は宇宙飛行士になるために、研究者の道に進もうと考えていた。東大の航空宇宙工学科(理科一類)に進学したかったけれど、理科二類に合格。ずっと宇宙飛行士を目指していたけれど、90年にTBS記者の秋山豊寛氏がソユーズに搭乗したことに納得ができなかった(笑)。そこから宇宙飛行士の道を目指すのはやめました」
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