「双極性障害」でマッチングアプリに80万円を課金… 元・東大生格闘家が語る病との闘い

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双極性障害の偏見をなくしたい

 仕事の休職や、入院などを経て気づいたことが巽さんにはある。

「SNS上では、希死念慮を投稿している患者たちも見かける。僕も死にたいと思ったことがあるので、その気持ちは理解できます。だったら睡眠時間やアルコール量などに注意して“今日は調子がよかった”と思って過ごすだけでも、意味があるのじゃないのかな。2018年に退院してから、この7年間ほどうつ状態の症状は出ていません。これってすごく珍しいけれど、まだ寛解はしていない。というか双極性障害は、完治できる可能性がゼロって言われているので。結局、薬物療法、心理療法、あとは規則正しい生活しかありません」

“健全なる精神は健全なる身体に宿る”という古代ローマの格言があるが、この言葉をどう思うか訊ねてみた。

「格闘技をやっていたせいもあるけれど、その例はよく出されます。『巽さんが大丈夫ってことは、僕はおかしくないよね』って。でも双極性障害は、精神ではなくて脳の障害です。僕が本を書くことで、双極性障害の正しい知識も広めていきたいって思っています」

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 記事後編では、東大生にして格闘家という経歴をたどった巽さんの半生と「これから」についてお聞きした。

池守りぜね(いけもり・りぜね)
東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。

デイリー新潮編集部

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