「双極性障害」でマッチングアプリに80万円を課金… 元・東大生格闘家が語る病との闘い
転職後、精神科に2回の入院。躁状態でマチアプに80万円課金
2000年に格闘家を引退し、2007年には最初に入社した企業を退職。約2年間、会社員と格闘技を両立したが、いわゆる企業に所属しているアスリートとは異なり、ワーカホリックだったという。
「32歳で結婚したのですが、その頃はかなりの激務で週の半分はタクシー帰宅していました。深夜2時か3時までは働いていましたね」
その後、また別の食品関係の仕事に転職したが、1年経たずに休職。この時は原因がわからなかったが、のちに通院するようになった精神科では「うつ」と診断された。
「1社目ではパワハラめいたこともあり、退職直後は人生初のうつ状態で、絶望的な感情になっていた。今は2社目の会社に在籍していますが、その後も2008年に3カ月、2014年に7カ月、2018年には1年6カ月、やはり休職しました。14年と18年の休職中はそれぞれ2カ月入院もしています」
入院するほどとは、どのような症状だったのだろう。
「2度目の入院時の症状を思い返すと、明らかに躁状態だった。自販機の前に商品を並べて、どうやら『誰か警察を呼んでください』って叫んでいた。その後、出頭したけど、叫んだりしたら警察が捕まえてくれると本気で思っていたのは覚えています。2度目の入院後は逆にうつ症状で、一日中、布団から出られない。嫁から『このままだと、会社に戻れないよ』って言われたのはよく覚えています」
躁状態の時に大変だったのは、常識に外れた行動をしてしまうことだという。
「お金は使っちゃいましたね。女性にメッセージを送るのに一通250円かかるマッチングアプリにハマってしまって。つながりのある女性全員にメッセージを送っていた。バカげていますよね(笑)。80万円くらいかかりました。これは躁状態で現れる症状(DSM-V操作的診断基準)で『性的無分別』という“困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること”に当てはまります」
前述の通り、はじめは双極性障害ではなく「うつ」と診断されている。
「うつから、双極性障害と診断されるまで4年かかっていますね。ずっと通院を続けていたのですが、診断された日は母も同席していました。双極性障害だったと分かり、『そんなに簡単に診断が変わるのですか』と母が怒っていたのを覚えています。でも双極性障害の第一人者の加藤忠史教授は、双極性障害をうつと診断してしまうのは、誤診ではないとおっしゃっているはず。それくらい診断は難しい。でもうつと双極性では治療につかう薬が違うので、怖いですよね」
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