歯が減ると要介護認定リスクが1.2倍に… 効果的な歯磨きの回数、タイミングは?
無理に30回噛もうとするのではなく……
答えは「できる」です。例えば、先ほど説明したように、噛むこと自体が脳に好影響を与えますので、とにかく「よく噛む」ことを心がけてください。厚生労働省も推奨しているように、目指すは「ひと口で30回噛む」です。30回噛むことで、唾液の中の消化酵素が炭水化物(デンプン)とよく混ざり、腸で吸収しやすくなる上に、よく噛むことによってヒスタミンという物質が脳内で分泌される量が増え、これが満腹中枢を刺激して食べ過ぎを抑制してくれます。さらに、ヒスタミンは内臓脂肪の分解も促進するので、この意味でも肥満防止に役立ちます。
とはいえ、言うは易(やす)しで、「ひと口で30回」を実現するのは簡単ではありません。ここだけの話、私自身、実践できているかと聞かれると「う~ん……」と答えに窮してしまいます。
どうすれば30回に近づけられるのか。先日、歯科医の先輩からこんなヒントをいただきました。その先輩いわく、「30回を意識し続けるとストレスになるし、そればかり考えるのは現実的にも難しいから、自分は、ふと思いついた時に『もう10回噛む』ことを心がけている」と。はなから「絶対に30回噛まなければならない」と考えると息苦しくなりますので、この「とりあえずプラス10回」というアプローチは、実践的ではないでしょうか。
また、無理に30回噛もうとするのではなく、自然と噛む回数が増える食事にするのも効果的です。つまり、固さがあるなどして、ある程度、噛まなければ飲み込めない食材を料理に取り入れるのです。
例えば、カレーライスのような胃に流し込みやすい食事を、30回噛んで食べるのは至難の業でしょう。そこで、食事のメニューの中に、れんこんやゴボウなどの根菜類、切り干し大根といった噛み応えのある食材を取り入れる。あるいは、タコやイカなど、弾力があり、よく咀嚼する必要がある食材を交ぜる。さらには、調理の際に食材を少し大きめに切り、自然と咀嚼回数が増えるように工夫するのも手です。このように、硬軟取り交ぜた食材で、「総合的に咀嚼回数を増やす」ことを考えてみてください。
味覚力を鍛える脳トレ
次に口腔を利用した健康対策としてお勧めしたいのが、「味覚力」を鍛えることによる脳トレです。
私たちは「甘味」「塩味」などの五味を脳で感じているわけですが、それぞれの味に関わる脳の部位は異なります。そして、味に加えて、食事をする時の雰囲気やその時の体調、個人的な食経験が合わさって、その味を「快」と判断し、「おいしい」と感じるのですが、おいしいと感じる脳の部位もまた異なります。したがって、より多くの味を感じ、それをおいしいと思えると、より多くの脳の部位を刺激し、脳トレになるのです。
では、味覚力を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか。それは、食わず嫌いや選り好みをできるだけ減らすことです。子どもの時に、苦くてとても飲めないと感じたコーヒーなどが、大人になるとおいしく感じられるということがあるように、先入観を捨て、より多くの味に挑戦していけば、おいしいと感じられるものが増えていきます。そうなれば、脳への刺激が増えるとともに、幸せホルモンであるセロトニンの分泌量も増えるため、アンチエイジングにもつながるでしょう。
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