過熱する「中学校受験」と謎多き「小学校受験」はどちらが得か…お受験で“偏差値”が絶対的な基準にならない理由
「偏差値の壁」を越えた学校選びを
以上を踏まえ、「小学校受験に臨んでみよう」と思ったら、どのように受験校を選べばよいのか。
小学校受験では、附属中高の偏差値が絶対的な基準にはならず、「家庭に合った教育環境を選ぶこと」が強く求められます。なぜなら、附属中学の偏差値だけを基準にすると、受験対象となる学校がごく限られてしまうからです。たとえば、大学受験を前提とする進学校のうち、四谷大塚の偏差値60を超える学校は、男子1校、女子4校しかありません。
こうした現実や、各学校の教育環境の魅力を知ることで、偏差値を重視していた親御さんも、次第に教育環境を重視する考え方へと切り替わっていきます。もちろん、偏差値を基準にするのも家庭の価値観のひとつです。しかし、偏差値にこだわりすぎると、選択肢が極端に狭まり、倍率の高い学校に集中しすぎてしまうため、子どもへの負担が大きくなるというリスクもあります。受験生はまだ5歳・6歳の幼児であるため、過度な負荷がトラウマにならないよう注意が必要です。
また、たとえ早慶附属(系属)小学校に進学できたとしても、附属校ならではの教育環境を十分に理解していなければ、そのメリットを活かせません。むしろ、上の学年へ進むにつれて、受験を経て入学してくる優秀な生徒たちを意識するあまり、学部進学の競争に向けた塾通いに追われることにもなりかねません
偏差値や学力判定が明確な中学受験も、「我が子が最も成長できる環境を探す」という本質は変わらないはずなのに、現実には、多くの家庭が「持ち偏差値帯」を基準に学校を選んでしまいがちです。しかし本来は、学力が届いている学校の中から、偏差値だけにとらわれずに自由に選んでもよいのではないでしょうか。
親のエゴではなく、子どもの未来を信じる選択を
小学校受験や中学受験では、どの教室に通わせるか、どの講座を受講させるか、家庭学習の量をどうするかまで、親が負荷を決める受験です。大学附属校や進学実績の高い学校を選び、「将来性を担保したい」気持ちは理解できます。しかし、もしそれが「このくらいの大学には進学してほしい」という親の願望であるならば、それは子どもの意志ではなく、親のエゴになってしまうかもしれません。
もちろん、将来の進学先を見据えた選択は大切です。しかし、それ以上に、「我が子が今、最も成長できる環境を選ぶこと」を第一に考えてみてはいかがでしょうか。小学校受験や中学受験での学校選びの本質は、子どもの心身・学力が最も伸びる場を見つけることです。その結果として、一貫校での充実した成長や、最終的な進学実績へとつながっていくのではないでしょうか。