過熱する「中学校受験」と謎多き「小学校受験」はどちらが得か…お受験で“偏差値”が絶対的な基準にならない理由
最終学歴を意識した受験の現実
小学校受験・中学受験を問わず、多くの親御さんが「最終学歴(大学の序列)」を意識しているのは否めません。
例えば、100人中80人が東大に進学する中高一貫校と、100人中20人が東大に進学する学校の両方に合格した場合、ほとんどの親御さんは前者を選ぶでしょう。
しかし、前者の「100人中80人に入る可能性」と、後者の「100人中20人に入る可能性」は、必ずしも前者の方が高いとは言い切れず、それぞれの子どもの特性によって変わります。
東大合格者が80人いる学校では、スピード感のある競争環境の中で切磋琢磨し、周囲に食らいついていけるタイプの子は大きく成長するでしょう。ただし、一度つまずくと差が一気に開くリスクもあります。常に誰かの背中を追いかける環境が合うかどうかは、子どもの性格次第です。下位20%に入ってしまう可能性も考慮する必要があります。
一方で、東大合格者が20人の学校では、先頭に立って走ることが得意な子が、自信を持ち、「自分はできるんだ」という高い自己効力感を育みながら学力を伸ばせる可能性があります。しかし、流されやすい子は、周囲のペースに影響されてしまい、十分に力を発揮できないかもしれません。
実際には、ここまで極端なケースは少ないですが、"少しでも偏差値の高い学校の合格を目指す"という、偏差値志向の小学校受験、一般的な中学受験の考え方が、本当に最適なのかという点は、再考する必要があるでしょう。
中距離走に例えるなら、ハイレベルなAチームの集団で走ることでタイムが伸びる子もいれば、先頭を走れるBチームで走る方が成長する子もいるということです。
また、仮にAチームの方がタイムが良くなるとしても、Bチームで先頭を走る方が本人にとって楽しいのであれば、それはそれで価値があることなのではないでしょうか。
親が求めるのは「学歴」か、それとも「最適な教育環境」か
教育環境の選び方は、本来「その子の心身・学力が最も伸びる環境」を探すことであるはずです。
近年、公立の小中学校でも学区を選べるケースが増え、「家から近い」「友達が多い」「校長先生の評判が良い」など、さまざまな要素を考慮して学校を選ぶようになっています。こうした判断の根底には、「我が子にとって最適な環境はどこか」 という視点があるはずです。
ましてや、小学校受験や中学受験では、さらに多くの学校の中から選択できるにもかかわらず、「偏差値」だけを重視してしまうのは、本来の環境選びとしては勿体ないと言わざるを得ません。6年間(または12年間)を過ごす学校を選ぶのなら、もっと多角的な視点を持つことが大切です。
冒頭の「小中高一貫校」の話に戻ると、もし小学校からの内部進学生と中高からの入学生に差があるとすれば、それは「偏差値」ではなく、「教育環境に対する意識の違い」 によるものかもしれません。つまり、「我が子が最も成長できる環境をどう選んだか」 の違いです。
確かに、私立小学校に通う家庭の教育意識は高いですが、中学受験を経て入学した家庭も同様に教育熱心です。むしろ、中学受験を経験した生徒のほうが、学力や集中力の面でアドバンテージを持つことも少なくありません(もちろん、内部進学生には英語学習の継続などのメリットもあります)。
いずれにせよ、大切なのは「どのように入学したか」ではなく、「入学後の6年間でどれだけ成長できるか」であることは間違いないでしょう。
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