ただの“懐かしいゲーム”じゃない…「ドラクエIII」リメイク版が「まだクリアしたくない」と思わせる理由

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終わらせたくない

 本流のゲームについては「バラモスを倒す」「ゾーマを倒す」「しんりゅうを倒す」という3つのメイン要素があるが、その傍流がやけに楽しいのである。毎度寄り道をする度に「いや、ゾーマを倒してしまったらこの楽しい時間が終わるんだよな……」といった感覚になるのだ。勝手な想像ではあるものの、中川翔子さんもそのような感覚を抱き、勇者を「レベル99」にまで育ててしまったのではなかろうか。

 本当にヘンなゲームなのだ。通常ゲームというものは「クリア」をすることを目的とするものなのだが、今回のドラクエIIIについては「終わらせたくない」という感覚を抱かせるゲームになっている。

 私は「勇者・魔法使い・盗賊・遊び人」という職業で開始した。その後、魔法使いを武闘家に転職させ、盗賊と遊び人を賢者にした。すると、今回のリメイク版で登場した「まもの使い」を採用していないことがムズムズしてくるのである。

 かくして、2人いる賢者の1人を「まもの使い」に変えたのだが、すると「はぐれモンスター」が逃げずに仲間になってくれるのだ! 本来「まもの使い」は序盤から採用しても良い職業なのかもしれない。だが、やはり「盗賊」の方がいいな。「遊び人」だったら「悟りの書」がなくても賢者になれるよな……。あと、今回のリメイク版、魔法がかなり強いよな、こりゃ賢者は一人最後まで残した方がいいな――こんなことを考え続けるゲームなのである。

10年後に期待すること

 正直、これまでのドラクエシリーズでは、「早く終わらせたい」という気持ちでプレイをし続けていた。だが、今回のドラクエIIIのリメイク版はあまりにも寄り道要素と様々な判断基準があり、不思議と「終わらせたくない。もっとなんかできるのでは?」といった気持ちにさせられたのだ。

 当然「いや、世界地図をベースとしている以上、これまでに登場した地域以外にも町や城を用意できましたよね?」や「いや、韓国や中国のある場所に別の町や城を作り別の要素を追加できましたよね?」といった不満はある。だが、今回のリメイク版、見事なまでに寄り道要素が多く、私自身は非常に満足している。だからこそ、10年後に「世界の主要国の要素を踏まえたリメイク」を期待したい。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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