フジ「10時間会見」で注目を集めた「フリー記者」の実態…“権力”以上に距離を置くのが難しいものとは

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フジ会見の質が悪かった理由

 今回のフジテレビの会見では、フリー記者に批判が集まったが、決してフリー記者全ての質が悪いわけでも、フリー記者だけが悪いわけでもない。大手メディアの記者からフリーに転身した優秀なジャーナリストや、冷静で建設的な質問をぶつけるライターも大勢いる。

 またフリーに限らず、メディア関係者には元々、我の強い人が比較的多い。当然だ。主義主張をするのが仕事なのだから。そして、聞かれたくない質問に答えさせるあのような会見の場においては、記者たちの語気の荒さを世間が「行儀が悪い」とするのも正しいとはいえない。

 ただ、フリー記者のなかには、報道倫理に欠く人や明らかに過激なことを言いたがる人が一部存在するのも事実だ。

 その要因は、何より組織ジャーナリストたちよりも「自由度」が高いことにある。社名を背負っているわけでも上司がいるわけでもないため、発言は過激なものになりやすいのだ。

 また、先述した通り、「誰もがなれる職業」であるため、ああいった大規模な会見に不慣れで、「会見の作法を知らない」ということもある。

 そして、大きな会見の場で爪痕を残そうとする人も一定数存在する。

 実際、あの会見に出席していた人の中にはSNSで「さっき誰々と(過激な)発言をしたのは、この私です」といった投稿が散見された。

 しかし、書き手が爪痕を残さねばならないのは会見の場ではなく、自身の「記事」のなかだ。

 門戸が広いフリー記者らが持ち合わせる多様な価値観は、会見には非常に有用ではある。が、会見の主役はあくまで会見を開く側であるという認識が足りなかった一部記者のせいで、多くの良質な質問がかすんでしまったのは、残念でならない。

 自由度の高いフリー記者だが、その自由には「責任」が伴うことを忘れてはならないのだ。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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