フジ「10時間会見」で注目を集めた「フリー記者」の実態…“権力”以上に距離を置くのが難しいものとは

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 10時間以上に及んだ先月のフジテレビの記者会見には、400人を超す「メディア関係者」が集結した。同会見で事件の内容以上に世間の注目を集めたのが、「ジャーナリストたちの作法」。なかでも「フリー記者」たちの態度に対する批判だった。

「メディアの在り方」を問う記者会見で、その問う側のメディアのマナーが問われるという、なんとも皮肉な結果となったわけだが、あの会見ではなぜあれほどまでにフリーへの批判が相次いだのか。

 今回は「フリー記者」の実態を、フジテレビの記者会見を通して紹介していきたい。

「ジャーナリスト」と「ライター」の違い

 最初に述べておきたいのは、「書き手の肩書きの違い」についてだ。

 同じ書き手であっても、肩書きには「記者」や「ライター」、「ジャーナリスト」、「ノンフィクション作家」、「批評家」と様々あるが、これらの定義には明確な違いは存在しない。

 新聞社やテレビなど、メディア企業に所属する記者たちは、元々「組織ジャーナリスト」とも称されることがあるため、退職してフリーに転身しても「ジャーナリスト」を自称する人たちが多い印象がある。

 一方、最も広義で使用されるのが「ライター」だ。

 ライターを名乗る書き手の中には、オウンドメディアで企業案件を書く人もいれば、ジャーナリスト同様、独自に調査報道をする人もおり、その活動スタイルは多種多様だ。

 筆者自身、現在は「ライター」を名乗りながら、調査報道やドキュメンタリーを中心に書いており、そのため周辺の先輩から「ライターではなくジャーナリストを名乗れ」と言われることがある。

 世間的には「ジャーナリスト」のほうがプロフェッショナルなニュアンスが強いようだが、筆者は、肩書きなんざむしろ必要ないと思う性分のせいか、個人的には「ライター」を名乗ることで「ジャーナリスト」よりも社会的地位や影響力が低く見られていると感じることはない。

 これらの点を踏まえ、筆者がジャーナリストを名乗らない理由があるとすれば、「ジャーナリスト」というのは定義が人によって違ってくるため、自他との認識の不一致を起こしやすいという点。

 そして何より、第一線で働いている労働者を取材することが多い手前、大上段に受け取られ、取材相手が委縮しないようにしたいという思いがあるというところかもしれない(便宜上、本稿で言う「ライター」はこれ以降、「調査報道をする書き手」を指すことにする)。

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