“闇バイト強盗”に“すり替え”、“精巧なコピーの持ち込み”も…「高級時計専門店」が頭を抱える“犯罪”の最新実態
白昼堂々の事件が多発
2020年にコロナ騒動が始まってから、投機対象として現物資産が注目されるようになり、それまでも上昇傾向にあった金地金や高級腕時計の相場が著しく高騰した。それに伴い、ニュースを騒がせるようになったのが、貴金属やロレックスの専門店を狙った犯行である。その手口は従来とは大きく異なり、大胆不敵なのだ。
【写真】強盗やすり替えのターゲットとなり安い高級時計・ロレックスの時計たち
いわゆる“泥棒”のように、周囲を警戒しながら店に忍び込むのではない。たとえば、闇バイトの募集で集められた若者たちが、白昼堂々と強盗を行うのである。一昨年5月、銀座の時計専門店に覆面姿の男たちが押し入った事件は記憶に新しいところだ。また、百貨店のイベントでは約1000万円相当の純金の茶碗が盗まれる事件もあった。
銀座のある時計専門店では、商談のためにトレーに出されたロレックスが、店員が目を離したすきに偽物とすり替えられる事件まで発生した。それは手品師も顔負けの恐るべき“指先の魔術”といえる手口であった。とにかく、想像を超えたありとあらゆる手段で品物を盗んでいくため、店側も気が抜けないのである。
店側の負担が増えすぎている
事件の多発を受けてか、中野にある時計専門店は現在も入口に柵を設置し、店員が監視の目を光らせ、簡単に出入りができないようにしている。ここまでとはいかないものの、厳戒態勢を敷いている店は少なくない。昨今の事態を、店側はどう見ているのか。ロレックスなど高級腕時計を扱う専門店の現役の店員X氏は、筆者の取材にこう打ち明ける。
「ここ数年で、時計店は本当に負担が多い仕事になってしまいました。最大の問題はやはり強盗対策です。確かに、昔から狙われやすい業種ではあったのですが、最近のやり方は大胆不敵で、強盗側も闇バイトで“無敵の人”だから無茶苦茶なことをする。もはや、いつどこの店が狙われてもおかしくないというほどで、客が来るたびに疑心暗鬼になってしまいます」
X氏は、いかにも強面な客がやってくると、接客するよりもまず身構えてしまうのだという。また、コロナ騒動以降はマスクの着用が一般化したが、「マスクにサングラスだと、以前なら強盗と思ってしまう見た目です。正直、精神衛生上よくありません。お客様を外見で判断するのは、もちろん良くないことだとわかっているのですが……」と、告白する。
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