米ロサンゼルスのスーパーに見た「むき出しの貧富の差」 超高級~低所得5店でオレンジ価格を比較すると

  • ブックマーク

いつかは日本も…?

 以上、個人消費の状況を確認するためのスーパー視察だったが、富裕層を中心とした店では活気を感じ、低所得者層の店では、生活必需品に絞って吟味した 買い物がされている場面に多く遭遇した。 アメリカの個人消費の分析は複雑そうで、ネット通販や各チェーンの売上状況なども深く考察すると、また別の側面も見えてきそうだ。

 日本には昭和から現在に至るまで、中間層の底堅さが経済や消費を支えていた。だが貧富の格差が広がりつつあるいま、消費行動は多様化している。 いつかはアメリカのような“貧富の差”に基づく買い物をしなければならなくなるかもしれない。個人的にはそうなってほしくないなとは思うが……。

 少し本題とはズレるが、視察にあたっては「Waymo One」を2回ほど利用した。 Uberと提携している無人自動タクシーである。ダウンタウンの街中では小型の無人宅配カーも普通に走っていた。日本の小売業は、商品開発力の点では中食を中心に世界的にも圧倒的なクオリティを保っている。だが強固すぎる規制の影響もあり、小売に絡んだテクノロジー発展はアメリカとの差が大きく広がりそうだ。 平成の30年間の遅れを取り返すべく、政府や小売業は積極的に新しい施策の導入と、その障害となる規制の緩和を行って欲しいと思う視察だった。

 折しもロサンゼルスを訪れたのは、ちょうどトランプ大統領の就任式のタイミングだった。当日の午後に、ダウンタウンのホテルで署名式をテレビで見ていたら、突然、窓の外から騒々しいシュプレヒコールが聞こえてきた。

 親パレスチナ派と思われるデモ隊が、反トランプ、反イーロン・マスク、反ジェフ・ベゾスの(あまり似てない)オブジェを掲げ練り歩いていた。ほか、移民問題を抱えるメキシコ国旗も掲げる人もいた。スーパー各社で目の当たりにした貧富の差とはまた違うベクトルで、アメリカ内には「層」の違いがあるのだと改めて感じた光景だった。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。