「中部国際空港」と「名古屋経済」に支えられ…「名鉄」が首都圏大手私鉄並みのコングロマリットに変貌

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大型投資を計画中

 空港線のインバウンド客輸送に加えて、三河線・西尾線など三河エリアの支線区でも利用が回復していることも注視したい。これはデンソー、トヨタ、アイシンなどの大手メーカーの工場を沿線に抱えており、その電車通勤客を引き受けているためでもある。典型的なのが西尾線の南桜井駅で、2008年に開業した新しい駅だがアイシンや中小メーカーの工場が立ち並ぶエリアに開業したため従業員の利用が多く、急行の停車駅にも昇格している。広見線、蒲郡線などのローカル線区については自治体の補助を受けつつ、一般線区の廃線は直近の20年間はなかった。それ以前がJR東海との競合、マイカーの普及、バブル後の景気低迷と受難続きで、廃線ラッシュを余儀なくされたのに比べれば、最近は健闘しているといえそうだ。

 関連事業においても名鉄は久々の大型投資を計画中。名鉄名古屋駅直上にある名鉄百貨店本店を2026年春に閉館した上でビルを建て替え、商業施設等の複合ビルを建設する。これは隣接する名鉄バスセンターや名鉄メンズ館のビルなども一緒に建て替え、JR名古屋駅のやや南側、南北約400メートルのエリアを一体で再開発するという大がかりなもの。新型コロナの影響で業績が悪化したことを受けて延期されていた計画だが、グループの業績回復により、この社運をかけた再開発が具体化してきた。

 懸念がない訳ではなく、広見線の新可児~御嵩間については沿線自治体の補助で運行を続ける現行スキームが“限界”に達し、今年6月をめどに鉄道の存続か廃止の結論を下す。鉄道を存続するにしても、線路の維持費用までも自治体が担って名鉄の負担を減らす“みなし上下分離方式”への移行が想定されている。追い風と向かい風をともに抱えているとはいえ、好調の中部国際空港と堅調な名古屋経済に支えられて、名鉄は首都圏大手私鉄並みのコングロマリットに変貌しようとしている。

大宮高史
エンタメでは演劇・ドラマ・アイドル・映画・音楽にまつわるインタビューやコラムを執筆。そのほか、交通・建築など街ネタも専門分野。

デイリー新潮編集部

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