「中部国際空港」と「名古屋経済」に支えられ…「名鉄」が首都圏大手私鉄並みのコングロマリットに変貌

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名古屋圏の交通網

 2025年2月、中部国際空港は開港20周年を迎える。東海地方の経済に不可欠となったこの空港は、名古屋圏の交通網の基幹にもなっている。とりわけ空港アクセスを担う大手私鉄の名鉄(名古屋鉄道)は、空港開業をきっかけに体質を大きく変え、今また攻勢に出ようとしている。【大宮高史/ライター】

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 2005年2月17日に中部国際空港が開港。それに先立つ1月29日から、名鉄は空港線を開業させて、名古屋市内からの直通列車の運行を始めた。同空港に乗り入れる鉄道は名鉄のみで、名鉄名古屋駅から中部国際空港駅までの運賃は現在980円。特別車「ミュースカイ」などに必要な特別車両券「ミューチケット」450円を加えてもリムジンバス(栄・伏見発着の名鉄バスで片道2000円)より安く、空港アクセスに一番便利な交通機関になっている。

 空港開業までの名鉄は、逆風続きだった。昭和期は豊橋―名古屋―岐阜間の名古屋本線を軸に広大な路線網を展開していたが、JR東海が発足して近郊輸送に注力し始めるとどんどんシェアと奪われていく。豊橋―岐阜間で競合するJR東海は快速・普通を大増発していき、岐阜市内のJR岐阜駅の利用者数は名鉄岐阜駅を逆転した。現在では名鉄岐阜駅はJR岐阜駅のおよそ半分強の利用者しかいない。名鉄グループ全体もバブル崩壊後はリゾート事業が不振に陥る。

 こんな状況の中、1990年代から2000年代初頭にかけて名鉄は大がかりな廃線と合理化を断行。1999年の美濃町線から、2005年の岐阜エリアの路面電車全廃まで、実におよそ100キロの路線を廃止。08年には日本モンキーパークと犬山遊園駅を結んでいたモノレールも廃止した。これだけの廃線にともない、大手私鉄では近鉄に次いで2位だった路線距離は東武に抜かれて3位に転落した。

 こうして“筋肉質”になった名鉄は空港開業に伴い、ダイヤも名古屋本線の優等列車を重視するものから変わり、中部国際空港に向かう常滑線・空港線の列車もエース格に位置づけた。

 00年代は中部国際空港の発着便数がまだ伸び悩んでいたが、10年代には旺盛なインバウンド輸送と堅調な愛知の製造業のおかげで、全線の輸送人員も上昇基調に転じた。2018年度には過去最高の輸送人員・営業利益を記録。その後、コロナで落ち込むも2023年にはコロナ前の9割の水準まで回復してきた。また空港島では大規模イベント会場の愛知スカイエキスポが空港に隣接していて、ここへのイベント参加客輸送も名鉄にとってはありがたい収入源でもある。

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