旅行客にこそ知ってほしい「北部九州の冬は想像以上に寒い」という事実…「2月の最低気温は氷点下に達します」

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電気ヒーターがあるだけ

 あと、家の中の寒さもなかなかストロングである。筆者は東京時代、渋谷区の代々木公園に住んでいた。小田急線の代々木八幡駅も使え、住所でいえば富ヶ谷にあたる。代々木公園の中にテントを張って住んでいたわけではない。富ヶ谷の中で引っ越し、2軒の家に住んだが、1軒目がとんでもないオンボロマンションだった。

 築50年で、エアコンは窓に取り付ける旧式のもので、隙間風が入ってくる。黄砂の時期は砂が侵入してくるようなボロ家である。こんな部屋だったのだが、一人暮らしで恋人もいない、という状況だったため恐ろしいことに冬はコタツで寝ていたのである。夏は布団にタオルケットだ。コタツで寝ると風邪をひく、と言われるが一切そんなことはなく、暖かい冬を過ごすことができた。

 そして、エアコンは実際はエアコンではない。冷却機能しかない「クーラー」である。さらに、我が家のキッチンには暖房器具はなく、仕事部屋には、二本の電熱が通るショボい電気ヒーターがあるだけだった。そして寝室はコタツだ。これで5年間冬を乗り切ったのである。

寝袋の上にコートを

 そして結婚して引っ越した次の家は3LDKで各部屋に暖房機能付きのエアコンがついた部屋だったが、ここでは夏以外エアコンを使うことはなかった。普段食事をし、妻が仕事をするLDKにはコタツがあったが、これで十分だったのである。私の仕事部屋では、電気式の温熱送風機で十分だった。

 しかし、現在佐賀県では、エアコンを27℃に設定して暖房をつけ、さらに足元に温風を出す送風機を使っている。

 冬に寝る時は敷布団の上にタオルケットと毛布と羽毛布団。電気代がもったいないからエアコンはつけない。この上にジッパーを開いて羽毛布団並の面積となった寝袋を乗せる。さらに、物理学者のキュリー夫人が「重さを増すと暖かくなる」と布団の上に椅子を乗せていたという伝記に従い、寝袋の上にコートを乗せ、重さを増加させるのである。

 かなり異常な寝具であるのは理解しているのだが、それほどまでに寒いのである。鉄筋コンクリートのマンションで決して壁が薄いわけでもないし、断熱性が劣るわけでもない。というわけで、北部九州に冬にいらっしゃる方は十分に厚着をしてお越しくださいませ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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