「空港で呼び止める人がいた」「迎えのタクシーが遅刻して」…82年の日航機「逆噴射」事故、生と死を分けた運命の糸

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同僚が寝坊したおかげで後方の席へ

「後ろに座ったおかげで助かったようなものです」

 というのは、41列目に座った男性(54)である。

「上長と一緒に搭乗しました。上長は前夜、仕事でほとんど徹夜状態で、食事もしていなかった。搭乗時間が迫っているにもかかわらず、近くのスタンドで食事を摂ったため、機内に駆け込んだ時には、予約した席もなく後ろの方の席に座らされました」

 同僚1人が待ち合わせ時間に遅れたため、26列目に座ったのは、前出の教育委員会職員。

「東京でのスケジュールが詰まっていたため、私たちは、『早めに空港に行き、前方に座ろう。着いたらすぐに機内を出て、仕事をしよう』と計画を立てていました。ところが、1人が空港に来ない。電話をすると、自宅で寝ていて、20分遅れで空港にやってきた。ギリギリで飛行機に飛び乗りました。それが我々の運命を変えましたね」

 会社経営者の男性(32)も寝坊が命を救った。

「10日に妻が喫茶店をオープンするため、その手伝いで前の晩は遅くまで仕事をして、朝は起きることができなかった。席は22列目。あの時のチケットを今も持っていて、時々眺めています。お守りじゃけんねえ」

タバコに命を救われた気がする

 迎えのタクシーの運転手が遅刻したおかげで助かった人もいる。

「約束の時間より15分も遅れて迎えにきました。もし、飛行機に乗り遅れたらどうするんだと叱りました。いつも7、8列目に座るのですが、あの日は2列目に座りました。しかし、両隣が大きな男の人で窮屈なので、離陸直前に頼んで26列目に移った」(前出・営業マン)

 用意された2列目の周囲の乗客のほとんどは死亡した。その一方、喫煙者であるが故に助かった人も多い。DC8型機では10~14列目が禁煙席であった。

 ある卸会社の営業課長だった35歳男性は、その頃はスモーカーだった。

「あの日は浅草で開かれる見本市に行く予定でした。同僚2人とも煙草を吸うため、後列を選びました。26列目だったと記憶しています。タバコに命を救われた気がします」

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