「2025年は“介護崩壊元年”」「介護離職で9兆1792億円の経済損失」 2025年問題のリアル

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介護の睡眠不足で仕事ができない事態に

 極論を言えば、会社は異動をさせない方がよかったとして、川内氏はこう話す。

「息子さんが同居して丁寧に介護すればするほど、両親は外部の介護サービスを利用しなくなります。かつてデイサービスで働いていたこともありますが、私たちのような経験や知識がある人間でさえ、自分の親を直接介護できるかと問われたら……。それはできないですね。元気だった時の様子を知っているがゆえに、そうでなくなっていく姿を見れば見るほどメンタルが崩れていく。この方に関しては、早い段階から自治体の地域包括センターに相談して、介護サービスなどのプロの手を借りた方がよかったと思います」

 企業による過度な支援が介護離職を早める可能性を、経営者側も理解すべきだという。

「70代の父親が脳梗塞になった娘さんは、中小企業で営業系の仕事に就いていました。それを介護があるからとデータ計算など事務系の職場に変更してもらいましたが、結果的には辞めてしまいました。このケースでは、父親が入院したのがふびんだと訴える母親と協力して、娘さんは実家で面倒を見ようと決めた。父親も“病院の飯がマズい”“リハビリなんてやらなくていい”と訴えるので、早期退院させた。右半身まひが残ったまま実家での介護が始まり、食事からトイレ、風呂の介助まで24時間面倒を見ないといけなくなりました。最終的には睡眠不足がたたって仕事ができなくなったのです」(同)

「介護することは親孝行」を変えないと

 この場合、親の希望通り、リハビリをしないまま退院するのが本当によかったのか、在宅介護が適切だったのかなど、冷静になって専門家の知恵を借りる必要があったと、川内氏は指摘する。

「私どもの調査でも、直接介護することは親孝行だと答えた人は6割を超えていますが、こういう意識を変えないと介護離職してしまいます。本当に親のために必要なのはどういう介護なのか。親が元気なうちから相談して、要介護になれば不自由になるのが当たり前、子供も自分ができる範囲で介護すれば十分という気持ちでいれば、両立は可能だと思います」(川内氏)

 内閣府が21年にまとめた統計によれば、要介護者になる原因の1位は認知症、続いて脳卒中、年齢による衰弱、骨折・転倒と続く。

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