「2025年は“介護崩壊元年”」「介護離職で9兆1792億円の経済損失」 2025年問題のリアル
「9兆1792億円の経済損失が」
地域の介護事業所が閉鎖するなどの理由で、介護サービスが受けられなくなるケースも増えている。東京商工リサーチの調べでは、23年に倒産や休廃業、解散した「老人福祉・介護事業」は510件。調査を開始した10年以来、過去最多を更新した。
かような現状では、家族が介護を担う場面が増えている。「2025年問題」で顕在化するのは、仕事と両立させながら親兄弟の介護をする「ビジネスケアラー」。それが難しくなって「介護離職」を余儀なくされる人々の存在である。
人口減少対策総合研究所で理事長を務める河合雅司氏が解説する。
「『ビジネスケアラー』の多くは50~60代前半で、職場で中心的な立場にいる割合が高く、急に課長や部長、取締役が辞めると、会社組織として計り知れない経済的なダメージがある。経産省の推計によれば、5年後には家族介護者の4割にあたる約318万人が『ビジネスケアラー』となり、仕事と介護の両立に伴う労働生産率の低下や介護離職による労働損失などで、9兆1792億円の経済損失が生じるというのです」
後を絶たない介護離職
国も手をこまねいているわけではない。育児・介護休業法が改正され、来年度から職場には従業員が“介護と仕事の両立に困った”と申告してきた場合に備え、企業は自社の両立支援制度や休業制度、休業給付金などを周知させる義務が生じる。
とはいえ、一つとして同じ人生がないように、介護の実情は千差万別。会社が社員のために支援しても介護離職は後を絶たない。
「私が相談を受けた中でいえば、会社が良かれと思って介護のために実家近くに異動させた結果、退職してしまった事例があります」
とは、NPO法人「となりのかいご」代表理事で、厚労省の中小企業育児・介護休業等推進支援事業検討委員を務めた川内潤氏だ。
「大手メーカーにお勤めだった40代の男性は、両親が70代後半で母親に物忘れの症状が出てきました。当初は東京の勤務地から実家まで片道3~4時間かけて介護していましたが、会社の配慮で実家の近くに異動。両親と暮らしながら介護できたのですが、母親の物忘れも進行し、ついには父親の体調も悪化して入退院を繰り返してしまい、会社の休暇制度を使い切って辞めざるを得ない状況に追い込まれました」
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