「2025年は“介護崩壊元年”」「介護離職で9兆1792億円の経済損失」 2025年問題のリアル

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介護崩壊元年

【前後編の後編/前編からの続き】

 年が明けてひと月がたつ中、われわれに重大な危機が忍び寄っていることをご存じだろうか。その名もズバリ「2025年問題」――。今年は少子高齢化に悩む日本で後期高齢者がいっそう増す節目にあたる。起こり始めた医療崩壊や介護現場の大混乱の実情と対策とは。

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 前編【「地域のクリニックが次々に廃業」 起こり始めた医療崩壊…医師も「地域医療が崩壊する危機を感じる」】では、現役医師らが明かす、医療崩壊の危機について報じた。

 だが、医療機関と同じく介護の現場にも異変が生じているのだ。

「2025年は“介護崩壊元年”です。介護職員は人手不足なのに、要介護者の人数は倍以上に増えていく。需給バランスが大幅に崩れてしまうのです」

 と嘆くのは、『介護格差』の著者で淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏。

「具体的に説明すると、現状70~74歳の要介護認定率は5.5%ですが、75~79歳はその約2倍の12.4%です。団塊の世代が75歳以上になるので、要介護の人たちが一気に増えるのは間違いありませんが、待遇悪化もあり訪問介護のヘルパーの有効求人倍率は14倍と人材不足の状況。すでに事業者やヘルパーなど介護サービスの提供側は、利用者である要介護者の“選別”を始めています」

「部屋はゴミ屋敷で食事は宅配弁当のみ」になってしまう問題

 特養老人ホームなどの介護施設では、入居希望者に面接が行われる。そこでは、こんな場面が繰り広げられていると、結城氏が明かす。

「要介護者が気難しい性格だったり、厄介で手がかかりそう、家族が口うるさそうだと、事業者から“すでに待機者がいるから”などの理由をつけられて契約できないことがあります。訪問ヘルパーの方でも、在宅介護に行ったら、高齢者によるパワハラがあまりにひどく契約を打ち切ったという話も出ています。利用者側の社会常識がない行動の問題に、人材不足が相まって、介護という社会保険の世界でも、供給側が圧倒的に強くなることが起きているのです」

 介護保険料を支払っても、満足にサービスを受けられない時代になっているのだ。

「在宅ならヘルパーさんが週3回くらい来て掃除をしたり、温かい食事を作ってくれたりしますが、それが減るなどすれば、部屋はゴミ屋敷で食事は宅配弁当のみ。要介護者のフラストレーションがたまって性格も悪くなり、周囲からも見捨てられる。孤独死になる事態に陥りかねません」(同)

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