「地域のクリニックが次々に廃業」 起こり始めた医療崩壊…医師も「地域医療が崩壊する危機を感じる」

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「地域医療が崩壊する危機を感じる」

 帝国データバンクが行った「医療機関の『休廃業・解散』動向調査」によれば、23年度における医療機関の休廃業・解散件数は、前年度比37.1%増の709件。大病院はわずかで診療所が約8割を占める。調査が始まって過去最多を記録した19年度(561件)を上回るありさまなのだ。

 後期高齢者の増加とともに、身近な町医者として頼りにされる院長先生らにも、高齢化の波が押し寄せている。

 再び菊池氏に聞くと、

「日本医師会の『医業承継実態調査』(20年1月)でも、約半数の医療施設で後継者候補が存在しない状態であることが分かっています。私も20年後は66歳、今70歳近い他院の院長先生たちも85歳以上になっているのは確実ですから、近い将来、綾瀬市内にはクリニックが三つとか四つしか残っていないかもしれない。都市部と地方では事情も異なりますが、街の人口が減れば新規開業する先生もなかなかいない。地域医療が崩壊する危機を感じます」

かかりつけ医の重要性

 高齢者ほどけがや急な発熱、そして突然具合が悪くなるケースが多い。その際に頼れるのは“何でも診てくれる総合診療かかりつけ医”だと菊池氏が続ける。

「高齢化がピークを迎える2040年には、65歳以上の3人に1人が認知症になるという試算もあります。認知症予備軍とされる軽度認知症(MCI)は、早期発見で生活習慣を改めれば、周囲のサポートによって患者さんの約3割が正常に戻る可能性があることが分かっています。患者さんを早期に見つけ治療につなげることも、かかりつけ医の大事な使命。高齢者が気軽に受診できるクリニックの必要性は高まっています」

 医療へのアプローチが難しくなれば、結果として重大疾患への対応も遅れる。高齢者なら要介護の奈落へと突き落とされてしまう。

 後編【「2025年は“介護崩壊元年”」「介護離職で9兆1792億円の経済損失」 2025年問題のリアル】では、崩壊する介護現場のリアルについて報じている。

週刊新潮 2025年2月6日号掲載

特集「日本人の5人に1人が75歳以上の後期高齢者に…『2025年問題』で始まる医療崩壊の『実情』と『対策』」より

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