「地域のクリニックが次々に廃業」 起こり始めた医療崩壊…医師も「地域医療が崩壊する危機を感じる」

国内 社会

  • ブックマーク

現役世代の負担が……

 ところが、来年8月にはその特例にも大鉈が振るわれることが決まった。

 内藤氏が続けて話す。

「75歳以上で2割負担に該当する世帯の場合、上限額が2万8000円に引き上げられるので、単純に個人で月1万円、夫婦なら最大で月2万円の負担増。もちろん外来医療費が月に1万、2万を超えるのは大変な病を抱えて通院される方で、上限額まで支払うことはないかもしれません。ただ最近は、高額な認知症治療薬などもあるので、あり得ない話ではありません」

 このような制度を支える現役世代の負担も大きい。

「これまで述べた制度は、現役世代の方々からの保険料ですとか、国や自治体の公費によって維持されています。団塊の世代の方の制度利用者が増えていけば医療費が増大することは明らか。日本の医療保険の厳しさは、より深刻になります。厚労省の資料によれば、20年度の後期高齢者の1人当たりの医療費は92万1000円(患者の窓口負担と制度からの給付費の合計)になっていますが、それ以外の世代の場合は22万円ですので、その差は約4.2倍にもなっています」

地域の診療所が次々に廃業

 医療費の負担増が生じても、求めれば誰もが一定水準の医療を受けられる。そうした担保があったがゆえに国民も渋々納得していたが、「2025年問題」の影響で、そうはいかなくなる。地域医療の拠点が次々廃業に追い込まれているのだ。

 きくち総合診療クリニック院長の菊池大和氏が言う。

「私のクリニックは神奈川県綾瀬市にありますが、人口8万2000人の街で20軒に届かないくらいしか地域の診療所がない。それなのに昨年二つほどが廃業しました。院長先生らの年齢は70歳に近い方が多く、46歳の私で2番目に若い状態。医師でも高齢になると体力がなくなり、後継者が見つからないと閉じざるを得ない。こうしたことが全国で起きています」

次ページ:「地域医療が崩壊する危機を感じる」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。