米原駅の老舗「井筒屋」が駅弁から撤退の衝撃…鉄道文化を彩る“駅弁”は生き残れるか

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駅弁業者の撤退は続くのか

 さて、今回の撤退を決めた経緯について、デイリー新潮編集部では井筒屋にインタビューを申し込んだが、残念ながら丁寧にお断りされてしまった。そのため、撤退を考え始めた時期や、撤退を決めた真意などは伺うことができなかったものの、井筒屋にとっても今回の決断はまさに断腸の思いだったのではないかと推測される。

 今後気になるのは、ほかの駅弁業者の動向である。いくら「のぞみ」が通過するとはいえ、東海道新幹線の駅である米原駅の井筒屋が撤退することは、ほかの駅弁事業者に与える影響も大きいはずだ。もはや特急も停車しなくなった駅で細々と駅弁を売っている業者はまだ存在するが、経営状態が盤石とは到底思えない。

 コロナ禍で鉄道の利用者は大幅に減少した。今後10年は、地方で鉄道路線の廃線に向けた協議が活発になると予想されている。10年後、駅弁業者はいったい何軒残っているだろうか。日本の鉄道文化の豊かさの象徴であり、旅情を高めてくれる食文化なだけに、衰退させてしまうのはあまりに惜しいと思うのだが。

取材・文=宮原多可志

デイリー新潮編集部

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