米原駅の老舗「井筒屋」が駅弁から撤退の衝撃…鉄道文化を彩る“駅弁”は生き残れるか
駅弁大会は本当に旨味があるのか
具体的なデータこそないものの、駅弁業者を取り巻く環境は悪化の一途をたどっていると考えられる。駅の改札口周辺やホームには次々とコンビニが開業しているし、新幹線や特急の車内販売は相次いで縮小されてきた。駅弁を購入する機会は確実に減少しているのだ。何より、駅弁を作る事業者は地元の中小規模の弁当店が多いため、大量生産はできない。
500~600円前後のコンビニ弁当と比較すると、駅弁は1,000円以上の価格で売られるのが普通で、割高に感じられる。いくらご当地の名物が入っているとはいえ、コンビニ弁当の倍以上の価格では、コスパ重視の旅行者が嫌厭したがるのは無理もないことだろう。駅の構内で買っても、レンジですぐ温められないことが多いのもデメリットだ。
スーパーや百貨店などでよく開催される“駅弁大会”は、それ目当てに訪れる人がいるほどの人気イベントである。しかし、以前に話を聞いた駅弁業者によると、出張費や販売手数料のことを考えるとそれほど旨味はないのだという。一部の駅弁業者は、駅弁大会で現地の十数倍を売り上げているケースもあるようだが、あくまでも例外のようだ。
青春18きっぷのシステムの改悪
結局のところ、駅弁業者が潤うためには一人でも多くの人が鉄道を利用し、現地で駅弁を買ってくれることが重要なのである。しかし、鉄道を取り巻く情勢もまた、厳しさを増している。少子高齢化や過疎化などの社会問題の影響を受け、運賃の値上げに踏み切る鉄道会社が相次いでいる。そのうえ、肝心の鉄道会社が鉄道を使いにくくしているのだから始末に負えない。
昨年は、鉄道に関するマイナスなニュースばかりが報じられた。特に、格安旅行の定番「青春18きっぷ」のシステムが大きく“改悪”され、販売枚数や利用者が激減したといわれている。また、北陸新幹線が敦賀駅まで開通したが、そこから先のルートが米原駅経由になるのか、それとも小浜駅経由になるのか、決まっていない。その間、利用者は敦賀駅で乗り換えを強いられることになる。
鉄道会社は不動産事業に熱心に取り組む一方で、肝心の鉄道の利便性を切り捨てる方向に進んでいるのだ。駅の再開発で高層ビルが建ち、都市部の駅はどんどんきれいになっているが、反面、地元の店がどんどん減り、チェーン店やコンビニばかりになっている。郊外のショッピングモールのような画一的な駅ビルが各地に誕生しているのは、さすがにいただけない。
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