米原駅の老舗「井筒屋」が駅弁から撤退の衝撃…鉄道文化を彩る“駅弁”は生き残れるか

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老舗駅弁事業者の撤退

 米原駅で明治時代から駅弁を販売していた、老舗駅弁業者の「井筒屋」が今年の3月20日を最後に駅弁事業から撤退すると発表した。同社は東海道本線が米原まで開通した1889(明治22)年から駅弁を販売してきた国内でも有数の老舗だったが、150年近い歴史に幕を下ろすことになる。

 米原駅は東海道本線から北陸本線が分岐する、鉄道の要衝である。ただ、東海道新幹線の「こだま」と「ひかり」は停車するが、「のぞみ」は全列車が通過する。したがって、単なる通過駅のイメージしか持っていない人も多いかもしれない。豪華な駅ビルがあるわけでも、駅前に歓楽街があるわけでもないため、何もない駅と揶揄されることもある。

 その一方で、青春18きっぷを使って旅行する人なら、一度はお世話になったことがあるだろう。JR東海とJR西日本の境界に当たり、普通列車だと原則として米原駅での乗り換えが必要になるのである。そして、乗り換えの合間に、井筒屋で駅弁を買ったことのある人は少なくないはずだ。すでにSNSでは鉄道ファンからも「井筒屋」撤退を惜しむ声が上がっている。

撤退は時間の問題だったのか

 筆者は取材で北陸方面に移動したり、彦根市を訪れたりする際に米原駅を何度も利用し、井筒屋の駅弁を数えきれないほど購入してきた。井筒屋はかつてホームで立ち食い蕎麦屋を営業していたが、既にその事業からは撤退している。その影響もあってか、近年は経営が厳しそうだなという印象を持っていた。

 米原駅は、悪名高い北陸新幹線開業後のJR敦賀駅ほどではないものの、乗り換えが若干面倒である。東海道新幹線から特急しらさぎが待つ在来線ホームへ、もしくはその逆もあるが、乗客はホーム目指して一目散に走っていく。そんなとき、構内の一角で駅弁を売る井筒屋の販売員の姿が目にとまる。

 販売員は一人で駅弁を売っているが、ほとんどの人は駅弁には目も止めようとはしない。その一方で、米原駅は近年、リニューアルが進められてきた。駅構内にあるコンビニエンスストアでは、駅弁よりもはるかに割安な弁当が販売されている。井筒屋にとっては競合関係にあるといえる。

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