「ベントレーを乗り回す生活から“負債36億円”へ」 愛知・巨額融資詐欺事件、逮捕された社長の転落人生

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 新入生を受け入れて間もない昨年5月末、愛知県小牧市にある「愛知中央美容専門学校」が突然、閉校した。その混乱が大々的に報じられた閉校騒動は、巨額融資詐欺事件へと発展したのだった。

 県警担当記者の話。

「専門学校の実質的な親会社の元社長らが、先月29日、県警捜査2課などに詐欺容疑で逮捕されました。2022年12月から23年1月にかけて、粉飾した決算書を名古屋市内の銀行に提出して融資金1億9000万円をだまし取った疑いです」

「資産を20億円も過大計上」

 逮捕されたのは名古屋市の携帯電話販売会社「アミックテレコム」の元社長、青木隆幸(68)と元専務の戸田直樹(50)、財務本部長だった荒井淳一(49)の3容疑者で、

「アミック社は債務超過でしたが、青木の指示で黒字と偽った決算報告書を作成。架空の預金や商品在庫、売掛金、長期貸付などをそれぞれ億単位で計上していました。会社の資産が約20億円も過大計上され、税滞納の実態も隠されていた」

 同じように粉飾された決算書は10種類以上あり、

「10以上の金融機関から受けた融資は総額数十億円に上ります。実情は、粉飾決算で融資を受けては別の金融機関への返済を繰り返す自転車操業状態でしたが、融資金の一部、数億円は長期貸付として青木に流れていたもようです」

 一連の粉飾が始まったのは17年ごろとみられている。巨額融資詐欺の首謀者と目される青木容疑者とは、いかなる人物か。

2拠点生活

 携帯電話ビジネスで財を成し詐欺師に転落した男です、と青木容疑者の古い知人が語る。

「彼は愛知出身で、名古屋学院大を出ると家業の家電販売店で働き、30代前半で電気工事会社を起業。1996年11月にアミック社を立ち上げ、2000年代の急速な携帯電話の普及に乗じて成功しました。愛知や静岡でauを中心としたショップを運営し、約30店舗を展開するまでになった。本人は“飛ぶように売れ、信じられないほど儲かる”と悦に入っていましたね」

 アミック社は06年9月期、売上高36億円超を計上。

「東京に関連会社をつくり、名古屋駅近くに自社ビルも購入した。米ニューヨークにも関連会社を進出させ、絶好調でした。ベントレーやメルセデスなどの超高級外車を乗り回し、食事は常に一流レストラン。名古屋と東京の麹町界隈で2拠点生活を送り、わが世の春を謳歌していました」

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