気取っている情けない中年男性…東京03・角田晃広 バカリズム脚本ドラマで「ドはまり役」

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喜劇役者として優れた特徴

 そんな三者三様のキャラクターが、さまざまなシチュエーションでぶつかり合う。たとえば、「キングオブコント」の決勝で見せた「コンビニ」というネタでは、豊本と角田が働くコンビニに、包丁を持った飯塚が強盗として現れる。飯塚が「金を出せ」と詰め寄っても、過剰におびえる角田とあまりに物怖じしない豊本のどちらにも全く話が通じない。飯塚はたまりかねて「ちょうどいい奴はいねえのか!」と叫ぶ。それぞれのキャラクターが生かされているだけではなく、物語としてもオチまでの流れがよくできている上質なコントだった。

 東京03のコントにおける角田のキャラクターは、気取っているけどどこかスキがあって情けない中年男性であることが多い。そして、俳優業でもそれに近い人物像を演じるケースが目立つ。本人が真剣にやればやるほどおかしみが出るというのは、喜劇役者として優れた特徴である。

「面白い演技」というのは、やたらとふざけたりはしゃいだりすることではない。そういうことをすれば人が笑うというものではない。むしろ、明らかに失敗しているのに強がっていたり、どこかかっこつけていたり、そういう部分に人間としての自然な面白さが出てくる。角田にはそういう人物を自然に演じる才能がある。

「ホットスポット」の役柄も角田にふさわしい。若手芸人として昔から一緒にライブに出ていたバカリズムが脚本を書いているからこそ、角田のキャラクターを見事に生かすことができているのだろう。今後も彼を軸にして物語が展開していくのは間違いない。今後が楽しみだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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