「NHKの峰不二子」中川安奈アナ フリー転身で高まる「目立ちたがり」の声がお門違いのワケ
婚活市場ではまだ有効でも……現実と乖離する「女子アナ幻想」
中川アナがこれだけ注目を集めたのは、「NHKの女子アナなのに目立ちたがり」という批判の矛先であったからだろう。民放の女子アナならまだしも、最後の砦たるNHKの女子アナが、港区女子みたいな自己アピールをするとは嘆かわしい。その手のコメントは必ず出てくる。
しかしもはや、その「女子アナ」像が時代錯誤なのかもしれない。いつも笑顔で、控えめに男性の隣でほほ笑み、口調も髪形もスカートもふんわりとした若い女性。そうした「女子アナしぐさ」は、今や婚活市場でだけ有効な幻想であり、実像とは大きく乖離しているのではないだろうか。
近年では、元TBSの宇垣美里アナやテレビ朝日の弘中綾香アナ、元テレビ東京の池谷実悠アナなど、気が強く負けず嫌いであることを開き直って人気を獲得する女子アナも増えた。人気アナウンサーランキングで殿堂入りしている水卜麻美アナだって、見た目ほどほんわかしてはいないし、勝ち気さを公言している。
というか、気弱な女子アナなんてやっていけないだろう。テレビ局側は決して認めないが、ジャーナリズムに関する勉強より、ミスコンに出ることが女子アナ内定の近道だという情報にたどり着き、きちんとファイナリストやグランプリに食い込む強い意志と行動力。どれほど承認欲求が強いとたたかれようと、キラキラしたインスタを上げ続けられる忍耐力。そうやって何千倍もの倍率を勝ち抜き、女子アナとなる。
けれども彼女たちの戦いは終わらない。容姿で、コメントで、特技のアピールで、ライバルに差をつけて番組に呼ばれ続けなくてはならない環境で、控えめで優しいだけでは早晩つぶされてしまう。
女子アナ「なのに」気が強くて目立ちたがり、ではなく、気が強くて目立ちたがり「だから」女子アナになるのだ。フジテレビ騒動が大炎上したのは、古き良き女子アナ幻想をいまだ信じている視聴者側の風潮も影響しているのではないか。
ちなみにだが、中川アナが2015年に出場したミス慶應の動画は今も見ることができる。面白いのは、この時の中川アナが、今の姿と真逆であることだ。一度も染めたことがないという黒髪をふんわりと巻き、ネイビーの地味なトップス、ゆっくりとはにかみながら話す様子は、かわいらしいがどこか頼りない。いわば「女子アナしぐさ」そのものである。でもわたしは、茶髪をなびかせタイトな服を着て、はきはき話している今の中川アナの方が素敵だと率直に思った。気が強いから派手になったというより、本来の自分を臆せず出せるようになったという、前向きで確かな自信を感じたからだ。
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