「辞める気は全くない」とフジ関係者 日枝氏、ダルトンと戦う気満々 「権力欲」の源泉とは
想定外の事態も
フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の株を7%以上持つ米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、フジとFMHの実質上の総帥ともいえる日枝久取締役相談役(87)の辞任を要求している。日枝氏は絶体絶命。だが、「辞める気は全くない」(フジ関係者A)という。それどころか戦う気力に溢れている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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「日枝氏は最低でも第三者委員会の結果が出る3月までは辞めない。中居正広氏によるトラブルが自分とは無縁であることが証明されると思っているからです」(フジ関係者B)
もっとも、第三者委員会は今回のトラブルを招いたフジの社内風土がどうしてつくられたのかについても調べている。日枝氏が責任を回避するのは難しいだろう。
日枝氏はダルトンと戦う気だという。
「日枝氏が選任したフジとFMHの首脳陣はよく言えば上品、悪く言えばひ弱。そもそも外資と戦えるのは日枝氏しかいない」(フジ関係者B)
だが、ここに来て、想定外のことが起こる可能性が出てきた。「まだ名前の挙がっていない大株主が現れ、FMHを支配しようとする動きがある」(フジ関係者A)。
だからFMHの株価は下がらなかったのか。FMHをめぐっての攻防戦は大乱戦になりそうだ。
組合は出世のツール
なぜ日枝氏は後進に道を譲れなかったのか。それは1961年以降、フジ内で権力を得ることが最大の生きがいだったからだとされている。
「組合の書記長まで務めながら出世したことが美談のように言われているが、それは少し違います。サラリーマンに過ぎない日枝氏にとって、組合は権力を手に入れるための唯一のツールだったのです」(フジ関係者B)
日枝氏は岡山県出身。早大教育学部時代は教師になろうと考えたこともあった。平凡な学生だった。夫人も元フジ社員。テニス部員だった。
出世するための後ろ盾がなかった日枝氏にとって、組合は権力を得るために欠かせなかったのである。日枝氏はどこの会社にもいる組合エリートだった。
「森喜朗氏や安倍晋三氏と極めて近い日枝氏が、本来の組合の精神となじむわけがないでしょう」(フジ関係者B)
組合活動は周囲に力を見せつけやすい。組合幹部になると特にそう。1980年、日枝氏を鹿内信隆氏に推薦し、編成局長にしたのも当時の人事部長だった。人事は組合と常に向かい合う部署である。鹿内氏は人事部長のお気に入りだった日枝氏を、息子の春雄副社長の右腕にした。
当時の日枝氏は部下によくこう言っていた。「実るほど頭を垂れる稲穂かな、だぞ」。しかし、本人が変わっていく。
日枝氏にとって組合は信用できる人材を見極める場でもあった。その1人は2007年に日枝氏が第8代社長に指名した豊田皓氏(78)である。
成城大のラガーマンだった豊田氏は、組合活動が理由で報道から人事に異動されると、退職を考え、他社で報道マンになろうと考えた。それほど真面目な人物だった。人望があった。日枝氏が社長に指名するのは自然な成り行きだったが、自分の考えと距離が生じると、たちまち遠ざけた。
日枝氏は2001年に第7代の村上光一氏(84)を指名して以来、先月末に就任した第14代の清水賢治氏(64)まで8人の社長をつくった。この間、自分は視聴率低迷や経営不振の責任を取らなかった。
その末が今回のトラブルである。様子見をしている社員もいるが、激怒している人間が大半である。
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