M-1準優勝「バッテリィズ」がブレーク寸前 ボケ担当・エースが単なる「無知」で終わらない理由

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エースの素朴な疑問

 彼らの漫才ネタのベースになっているのは、エースの素朴な感覚だ。ネタ作りの際、寺家がエースに対して「これ、知ってる?」「これ、どう思う?」などと特定の事物について話を振ると、「織田信長」も知らないほど知識不足のエースは、何かと見当違いの答えを返したり、予想外の角度から感想や印象を述べたりする。それを実際にネタに生かしているのだという。

 バッテリィズのネタをほかの誰かが真似しようとしても、このやり方で漫才が作れる人はなかなかいないだろう。その意味でも彼らの漫才は唯一無二のものなのだ。

 昨年の「M-1」で審査員としてバッテリィズの漫才を見届けたアンタッチャブルの柴田英嗣は「こんなクリティカルなアホ、初めて見た」と語った。エースというキャラクターの魅力を端的に表した名言である。まさにエースの言葉の端々には、無意識のうちに物事の本質を射抜くような批評的(クリティカル)なところがあった。

 普段のエースは、常識的な知識が少々足りないところはあるが、人間としてはしっかりした部分もあるし、何も考えずにのほほんと生きているようなタイプではない。漫才のときのイメージ通りまっすぐな考えを持っていて、憧れの人物は明石家さんまであり、理想のキャラクターは「ワンピース」のルフィだという。

 1月14日放送の「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)では念願のさんまとの共演も果たした。今年はこのニュータイプのおバカキャラ芸人がお笑い界を席巻することになるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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