フジテレビ騒動の皮肉な効果… 差し替え「AC」広告のおかげで“刺さる”今期ドラマ

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本編とリンクするようなCMも

 1月30日の第4話では、ドラマの内容と密接にリンクしたCMも流れた。この回で一平は、幼なじみのイタリアンカフェの店主・都(冨永愛)に「こども食堂」をやってもらおうと思いつく。SNSでも話題になるほど人目を引く都ならば、テレビでも映えることは確実で、取材に飛びつくという算段だ。亡き陽菜の闘病中は、子供たちがこども食堂に世話にもなっていた。だが、都は「子どもを産んだ経験がないから」と一平の申し出を断る。

 そんなドラマの合間に流れたのが「認定NPO法人全国こども食堂支援センター むすびえ」のACのCMだった。俳優の松重豊がこども食堂を訪問した様子を再現した映像に「ここにいるのは子どもだけじゃない。食べるだけの場所じゃない。みんなの居場所なんだね」という語りが入る。そして「こども食堂は、あなた食堂」と全員が唱和する。

 もともと「こども食堂」には「貧困状態の子どものための場所」という印象が根強くあった。「むすびえ」の湯浅誠理事長は、そうした子どもだけに限定せず、どんな子どもでも大人も行く“みんなの居場所”というイメージ普及に尽力してきた。こども食堂に限らずとも、対象を限定しない多様な人が集まる「ユニバーサル型」の居場所が幅広い効果を生むことは、様々な活動でも言われている。

第4話ではその後…

 ドラマのその後の展開では、初潮を迎えたひまりが、コンビニで生理用品を万引きしてしまう。母は生前、娘のためにポーチを準備していた。都は、これからひまりの支えになることを決意。ひまりの不登校の根っこには、母親の死があったのだ。

 都はひまりを抱きしめて語る。

「私はお母さんの代わりには、ひまりちゃんちの太陽にはなれないけど、お母さんが届けたい光がまっすぐにひまりちゃんに届くように、風……ふーっと雲を吹き飛ばす風にはなれる。なれるし、なりたい。ならせて……」

 そしてひまりも「こども食堂を手伝わせて」と申し出る。

「私、都さんみたいになりたいから……。都さんってカッコいいよね」

 それを受けて、都も一平たちに告げる。

「ならなきゃね……。本当に、カッコいい大人。なれるよね、子ども産まなくても」

「なれるんじゃない?いつか……」

 その台詞は高校時代の一平が自分自身に言ったことでもあった。「みんなが一番好きな自分でいられる場所をつくる」。校内選挙で訴えた自らの言葉を思い出した。

 ドラマでは次第に家族の「目的」が問われる段階に入っていく。果たして一平はニセモノ家族を利用するだけの“日本一の最低男”のままなのだろうか。合間に流れるAC広告と本編との不思議な連動と併せ、ぜひ楽しんでほしい。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

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