いま誰よりも「一票の重みを知る男」を直撃 市議選で最後の議席が同数…「くじ引き」の結果に本人は納得しているのか

国内 社会

  • ブックマーク

原さんと一緒に仕事がしたかった

 現在の心境を原氏はこう語る。

「ただ落ちた、というだけにはしたくないですね。私の考えること、これまでやってきたことを知ってもらいたかったが、届かなかった。私の至らなさもありましたが、とにかく『一票の重さ』を知りました。あと、有権者に言いたいのは、ご自身が投票した人が通ったり落ちたことに納得できるか、を考えてほしいです。その人が落ちたら悔しい、と本当に思える人に投票してほしいです。

 一方、嬉しかったのは、議員のことを一番見てくれている市役所の職員さんから『原さんと一緒に仕事がしたかったです』とメッセージをいただけたことですね。私は反省はしますけど、後悔はしないことに決めています」

 これから原氏は人材バンクから紹介された旅館やレストラン等で週30時間働きながら、冒頭で登場したNPO・WeDの仕事をしつつ、新たなプログラムも構築準備中。3軒の飲食店のオーナーと繋がり、高校生がそこで働けるようにするというものだ。アルバイトをしたい高校生は就労前に座学や指導を受け、社会人・起業家精神を学ぶ。学校には働きぶりを定期的に報告することや、試験前にはアルバイトをさせないなどのルールを守らせることで、アルバイトへのハードルを下げる。

落選を無駄にしたくない

 学校にとってはアルバイト生の「見える化」となり、企業にとっては不足する人材、特に若い人材の確保と企業理解に繋がるというメリットがある。将来的には飲食店だけでなく、農家や漁業も含め、就労経験のある即戦力の高校卒業生を地域に送り出すことで地域にも貢献する。これが将来の地域にとって意義のあるアントレプレナー精神を持つ若手の育成に繋がることを目指す。

 これまでやってきた活動を民間人の立場で行うことになるが、それはそれで良い点もあるという。議員が直接かかわる事業に対して、市は受託業務を依頼したり、補助金を出したり応援をすることはできないが、今後はそれが可能となるのだ。さらに原氏は何か問題を解決するにあたって、相談すべき議員や職員の目星がすでについている。そして原氏は最後にこう語った。

「今回の『一票の重さ』で、皆が政治や選挙について考えるきっかけになったようで、無茶苦茶嬉しいです。多くの人から『あんなに接戦になるんだったら原さんに入れておけば良かった。原さんだったら余裕だと思っていたんだ』なんて言われましたが、その人だって一票の重さを痛感したはずです。私の知り合いで投票に行かなかった人も後悔しているかもしれない。とにかく私の落選を無駄にしたくないです! 次の選挙ですか? 今は出る気はないです。でも、高校生が『原さん出てください!』と言ったら出ざるを得ないでしょう。でも、それ反則ですよ(笑)。絶対に仕掛けないでくださいね」

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。