中国で起きた2件の日本人殺害事件、“スピード死刑判決”の理由は 「“口封じ”のような裁判」

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“早く忘れ去ってほしい”

「まず、1月29日に中国の正月にあたる春節が始まるのが一つ。昨年の事件は、正月の前に片付けておきたいのだと思います」(高口氏)

 暦によって重大事件の帰趨が決まってはたまったものではないが、さらに、

「景気が低迷する中国では昨年、無差別殺人が横行しましたが、社会不安をあおる事件に対しては厳罰で臨むことをアピールする狙いもあるでしょう」(同)

 そこで誰しも思うだろう。真相解明の見地からは、本末転倒ではないか、と。

「中国の司法は、基本的に政治的判断に左右されるものです」

 とは、元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島香織氏である。

「特に深センの事件は日中関係を阻害しかねません。中国当局としては、国内外で、政府の方針や対応について議論が活発になるのを阻止したい。だから早く忘れ去ってほしい、との思いがあるはずです。また、日本に対しては“日本の望み通り迅速に対応した”と考えている可能性もあります」

 もう死刑にしたから文句はないね、というわけだ。つくづく、考え方の溝は深い。

“口封じ”

「公判初日に死刑判決というのでは、“口封じ”のような、いい加減な裁判なのではないかと思ってしまいます。背景について日本メディアは取材できず、動機が不明のまま死刑になれば、どうしても不可解な気持ちが残る。中国人にしても、“無差別殺人犯がすぐ死刑になったから安心だ”とは思わないのではないでしょうか」(高口氏)

 強権的な中国当局のやり方。やはり、この国とはまともな付き合いはできないのだ。

週刊新潮 2025年2月6日号掲載

ワイド特集「べらぼう」より

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