中国で起きた2件の日本人殺害事件、“スピード死刑判決”の理由は 「“口封じ”のような裁判」
かの国にはあぜんとさせられるばかりである。昨年、日本人が標的にされた二つの殺人事件が中国で発生した。今年に入り公判が始まるや、立て続けに死刑判決が下ったが、肝心の動機については不明のままなのだ。
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1件目は昨年6月、江蘇省蘇州で起こった。
「スクールバスを待つ日本人母子が、中国人の男に刃物で切りつけられ、負傷。母子をかばおうとしたバス乗務員の中国人女性が刺殺されました」(中国特派員)
2件目は広東省深センで、
「日本人学校に通う10歳の男児が、登校中に中国人の男に刃物で襲われて亡くなってしまった。その日は、満州事変の発端となった柳条湖事件と同じ9月18日だったことから、“反日”が根幹にある犯行ではないかと注目されました」(同)
年が明けると、日本での地裁にあたる中級人民法院でそれぞれ公判が始まった。
「蘇州の事件の公判は1月9日に始まり、23日に故意殺人罪で死刑判決。深センの事件は24日が初公判で、同じく故意殺人罪、即日の死刑判決でした」(同)
異例の早さでの死刑判決
当初より、日本政府は動機の解明を求めてきたが、
「せいぜい明らかになったのは、蘇州の犯人は借金を苦にしていたこと、男児を殺した男はインターネットで注目されたかったこと程度。後者の男は裁判中に“被害者の家族や弁護士、日本の大使と話したい”と発言したものの、なぜ日本人を狙ったのかについては、分からずじまいです」(前出の特派員)
強引に幕が引かれた日本人への襲撃事件。一連の流れで、日本人にとって理解に苦しむポイントに、事件発生から死刑判決までのスピードがある。
「基本的に中国は二審制ですが、仮に控訴しても即日棄却もある。もともとスピーディーですが、今回は異例の早さでしょうね」
そう解説するのは、中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏。例えば昨年11月の、35人もの死亡者が出た無差別殺人事件の被告は、事件から2カ月、判決からは1カ月足らずで死刑が執行されている。なぜ、かくも事を急ぐのか。
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