「移民対策」強化を巡りドイツが大揺れ 「不寛容にならざるを得ない」納得の理由とは

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移民はさらなるマイナス材料

 移民に対する風当たりが強くなっている背景には、ドイツが20年ぶりに陥った深刻な経済状況がある。

 ドイツの昨年の国内総生産(GDP)は前年比0.2%縮小し、2年連続のマイナス成長だった。ドイツ産業連盟は今年もマイナス成長を懸念しており、ドイツ再統一後初の3年連続マイナス成長となる可能性も排除できなくなっている。

 景気の弱さが労働市場に波及し始めており(1月の失業率は6.2%に上昇)、インフレが再燃するリスクも残っている。

 生活苦にあえぐドイツ国民にとって移民の受け入れはさらなるマイナス材料だ。

 米ハーバード大学のジョージ・ボーハス教授は「移民の受け入れは格差の拡大を招く」と主張している。2015年の米国のデータに基づく推計によれば、移民に帰属する分を除くと経済全体の貢献分はわずか0.3%に過ぎない。内訳を見てみると、労働者の取り分は3%減少する一方、企業の取り分は3%増加している。労働者の中では低所得者への 打撃が大きい反面、高所得者はメリットを享受する。

リベラルが忘れた「労働者の利益を守る」

 ドイツ国民が移民に不寛容になるのは仕方がないことなのかもしれない。

 移民に寛容なリベラル政党は元来、支持基盤だった労働者の利益を守るため、移民の受け入れに後ろ向きだった。だが、グローバル化が進むにつれて「労働者の利益を守る」という本分を忘れ始め、今や大企業やエリート層の利益を代弁する存在となった感がある。

 反移民のうねりの高まりを「民主主義の危機だ」と危惧する向きは多いが、「あらかじめ決められた理想(移民の流入拡大)を一方的に押しつけ、その理想に追随しない人々を排除するオピニオンリーダーたちの傲慢さの方が問題だ」との指摘も出ている。

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