「移民対策」強化を巡りドイツが大揺れ 「不寛容にならざるを得ない」納得の理由とは

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約16万人が参加した大規模デモ

 2月23日に総選挙が実施されるドイツが移民政策を巡って揺れている。

 ドイツの首都ベルリンで2月2日、最大野党のキリスト教民主党(CDU)に対する大規模な抗議デモが行われた。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と協力したというのがその理由だ。CDUは1月29日の連邦議会で、少数派の与党が反対する中、AfDの賛成票を得て国境管理の厳格化を求める決議案を成立させていた。

 警察発表で約16万人が参加した大規模デモにもかかわらず、CDUのメルツ党首は強気の姿勢を崩していない。

 メルツ氏は「(AfDの手を借りることになり)遺憾」として意図的な協力はなかったとしながらも、ドイツで移民的背景を持つ人物による殺人事件が相次いでいることを踏まえ、「不法移民や難民問題に対する与党の行動力の欠如が招いた結果」と自らの行動を正当化した。

 このメルツ氏の言動は、メルケル前首相が「総選挙の争点となっている移民問題で極右に頼った」とする異例の非難声明を出すなどCDU内で物議を醸した。その影響もあってか、CDUが1月31日の連邦議会で提出した移民の流入制限を目指す法案は、前述した29日の決議案に賛成した一部の議員が棄権したため、僅差で否決された。

ドイツ政治への影響力を強めるAfD

 最新の世論調査結果によれば、CDU会派の支持率は29%、AfDは23%に対し、与党の社会民主党(SPD)は15%、緑の党は13%だ。

 CDUは「AfDと連立を組まない」としていることから、選挙後にSPDなどと連立交渉を行うことが確実視されている。だが、決議案の件が災いして、首相候補のメルツ氏に対するSPDの不信感が高まっている。

 特にショルツ首相にその傾向が強く、1月31日には「CDUは他党と形式的な連立協議を行うが、最終的にはAfDに頼る可能性があり得る」との疑念を表明した。

 極右だと揶揄されているAfDだが、意外にもその移民政策はメルケル氏が2005年に首相になった頃のCDUとあまり変わりがない。連立に正式に加わるかどうかは別として、AfDがドイツ政治に及ぼす影響力を強めていくのは間違いないだろう。

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