安藤優子さえも「知らない」フジテレビ社内力学の難しさ 「自浄作用」を阻む「意外な要素」とは

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勝ち抜きゲームを強いられる特殊な環境 あしき業界文化に利用されがちな女子アナたちの勝気さと野心

 フジテレビに限らずだが、女子アナのクイズやトークバラエティーなどで垣間見える気の強さには目を見張ることも多い。MCの隣でほほ笑むだけにしろ、番組の顔となれるのは一人だけという勝ち抜きゲームに放り込まれる環境下で、自分が頂点に立つためなら何でもやるという勝気さや上昇志向は肥大していったことだろう。それは制作担当者の歓心を買うのに有利に働く一方、あしき業界文化にうまく利用されてしまう危険性もはらんでいたのではないか。セクハラじみた接待や演出にも、過剰適応してしまっていたのではないかと思うのだ。

 番組に起用してもらったのは、本当に「実力」なのか。多分その疑念を、わたしを含めた視聴者も、おそらく多くの女子アナたち自身も拭いきれないだろう。アナウンス能力や機転よりも、若さや容姿、甘え方、場合によっては漢字も読めない幼さが求められているのでは、と思うキャスティングがないわけではなかったからだ。特にフジテレビはその傾向が顕著だった。取材や原稿読みに励むより、プロデューサーやスポンサーのいる飲み会でにこにこ笑っている方がライバルを出し抜ける。フリー転身や結婚につながる人脈もできるかもしれないし。そんな思考に陥ってしまう女子アナがいたとしても理解できる。でも一方で、本業ではないことにいそしんでいるという、野心と背中合わせの後ろめたさが、「上納」疑惑を生むようなノリや文化を覆い隠してきてしまった部分は少なからずあったのではないだろうか。

 あまり昔のことを言いたくはないが、さらに踏み込むなら、安藤さん自身も過去についての追及を免れない。夫は元フジテレビの情報制作局長でもあり、10年の不倫の末の略奪婚と報じられた。1996年に安藤さんの家を一緒に出入りする姿がスクープされ、当時の取材に対しては、「10年来の友達」「良き理解者」と両者ともに否定したが、今だったらアウトだろう。恋愛とキャスティングは無関係とどれだけ言いつくろっても、外から見れば局の大物がフリーの女子アナと付き合う見返りに便宜を図ったと見られても仕方がない。

 しかし、当時はどちらも担当番組を降板することなく切り抜けた。安藤さんはそれだけ会社に守られてきた、体制側にいる人でもあるのだ。だから30年もの間、「見ざる・聞かざる」でいられたのかもしれないと、少し思ってしまった。

「自浄作用」と息巻くも検証報道はいばらの道? 他社人材任せが目立つフジの報道力の弱さも課題

 安藤さんは「ワイドナショー」で、「自浄作用という意味でも、放置されていた1年半に何があったか検証することも選択肢の一つでは」と息巻いていた。確かに、昨今の報道では女子アナばかりに限定されがちだが、協力機関含む女性社員や、立場の弱い男性社員たちにも不本意な形の圧力がなかったかはきちんと聞いてほしいところである。

 ただもしも「上納」的なことが行われていたのだとしたら、当事者が口を開くまでには相当な時間やケアが必要だろう。被害者だけでなく、いま成功している立場にいる人ほど正直に語ることが難しい場合もある。築き上げた成功と引き換えに、見て見ぬふりをした涙はなかったかと、思い返している社員もいることだろう。

 また安藤さんに限らず、「めざまし8」もタレントがMCを務め、夕方のニュースもNHK出身のフリーアナを起用など、報道人材のアウトソーシング化が目立つフジテレビ。女子アナのバラエティータレント化が批判されるが、本来のアナウンサーとしての力を見せられる場が減らされていることも、報道機関として疑問視される原因になっているように思う。検証報道がどこまでできるかは分からないが、自局のトラブルまで安藤さん任せではちょっと悲しい。今回のトラブルを機に、女子アナも含む自局の報道人材を育て、疑惑を払拭してほしいものだと思う。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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