「文春」を批判している場合なのか フジ経営幹部が直面する最大の危機「株主代表訴訟」

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途方もない金額

 もっとも、今後の日枝氏はどうなるか分からない。フジ側が設置に消極的だった第三者委員会の動きが活発だからである。フジの予想以上らしい。

「第三者委員会が『問題の根っ子は日枝氏がつくった社内風土にある』という結論を下したら、さすがに日枝氏も退くしかない。実際にそう見る社内関係者ばかりだから、そうなるのではないか」(フジ関係者)

 事実、今のフジの空気は日枝氏がつくっていると見ていい。たとえば取締役相談役になったあとの8年で社長を5人も替えた。視聴率不振などが理由だが、これでは社長に就いても落ち着いて戦略が練れないだろう。

「日枝氏が失脚した場合、今度は日枝氏と取締役たちを相手にする株主代表訴訟を起こされる可能性が高い」(フジ関係者)

 株主代表訴訟とは、取締役の意思決定や行動により会社に損害を与えながら、会社がその責任を追及しない場合、株主がその取締役の責任を追及する訴訟を起こせる。

 フジの放送収入は昨年5月の予想と比べて、233億円の減収。株主代表訴訟が起こされた場合、賠償額は途方もない金額になる。訴えられるとすればトラブルと直接関わった港氏、大多氏らではないか。

 関テレは他局の間違いにはどう向かい合うのだろう。ライバル・MBS(大阪)の「ニュース解説」(1月28日)にも間違いがあった。

 たとえば、フジの創業家を鹿内家と繰り返し報じたが、初歩的な間違いである。創業したのは池田勇人を支えた財界四天王の1人・水野成夫氏だ。水野氏は文化放送、産経新聞の社長も務めた。

 ちなみに水野氏の長男・誠一氏(78)は元西武百貨店社長。その妻は女優の故・木内みどりである。

 創業者の水野氏から経営権を奪ったのが、鹿内信隆氏。労働組合と真っ向から対立する日本経営者団体連盟(日経連)の大幹部だった。だからフジでは歴史的に労組が育ちにくかった。

 日枝氏を重用したのも鹿内氏だ。当時の人事部長が日枝氏を鹿内氏に強く推した。鹿内氏は日枝氏を息子の春雄副社長に組ませた。

 MBSは、東京・河田町のフジ旧社屋の3階に大部屋をつくり、編成部と各制作部を同居させたのは日枝氏だと報じたが、これも違う。当時の日枝氏は編成局長に過ぎず、そこまでの権限はなかった。大部屋をつくったのは春雄氏である。

 おそらく関テレは自分たちの不利益にならない程度の間違いは見過ごすのだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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