「DeepSeekショック」で欧米は大混乱も…開発に参加した「95年生まれのAI天才少女」は「約2億円での引き抜き」報道

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Xiaomiの「巨額引き抜き報道」で注目

 中国のAIスタートアップ企業DeepSeekが嵐を巻き起こしている。大きなきっかけとなったのは、同社が1月20日にオープンソースとして発表したAIモデル「DeepSeek-R1」。その高性能と低コストぶりが米シリコンバレーの絶賛を受けたことから、27日には半導体大手NVIDIAの株価が急落する遠因となった。

 米OpenAIの「ChatGPT」をしのぐといわれるR1だが、その後はポジティブではないニュースも増えている。DeepSeekへのサイバー攻撃やOpenAIデータの不正入手疑惑、欧米の警戒モード、「天安門事件」など中国でタブーの話題に関する“中国的な”反応、機密データのネット流出疑惑など、ユーザーの視点から気になる内容も多い。

 一方、中国で注目されているキーワードは「95後AI天才少女」だ。「95後」とは1995~1999年に中国で生まれた世代を指し、2000年以降に生まれた「00後」と合わせて「Z世代」に相当する。

 中国のネットは昨年12月、米スマホ大手Xiaomi(小米)の創業者で現トップの雷軍(レイ・ジュン)氏が「95後の女性AI開発者を数千万人民元で引き抜く」というニュースで盛り上がった。その女性とは1995年生まれの羅福莉(ルオ・フーリー)さん。現在はDeepSeekの開発に携わったという情報も追加され、一躍“時の人”となっている。

四川省の地方都市出身、父は電気技師、母は教師

 引き抜き報道で報じられた「数千万人民元」は、仮に1000万人民元でも現在のレートで約2億1000万円。近年の“チャイナドリーム消滅説”を押し戻せる金額だけに、中国社会が注目する理由もよくわかる。中国内で学んだ「天才少女」が米国のAIを打ち負かしたという構図もかなり好まれているようだが、なにより巷が関心を抱いているのは羅さんの生い立ちとキャラクターだ。

 北京師範大学でコンピューターサイエンスを専攻、北京大学大学院で計算言語学の修士号を取得という学歴から始まる羅さんのキャリアは、間違いなく“才女”のものだ。大学院在学中には、自然言語処理(人間が日常的に話す言葉をコンピューターに処理させる技術)分野で世界最高峰の国際会議「ACL」で複数の論文を発表し、高く評価された。その後、アリババグループの研究機関「アリババDAMOアカデミー」を経て、杭州に拠点を置く「幻方量化」へ。その「幻方量化」が設立したDeepSeekへ移籍し、AIモデルの開発に携わった。

 なんとも華麗なキャリアだが、羅さんが公表していた“詳細”を付け加えるとイメージが変わる。四川省の「小さな都市」に生まれ、電気技師の父と教師の母は普通の農家の出身。2013年に地元の高校から北京師範大学に進学し、電子工学を専攻したが、1年生の時点で早くも道に迷ってしまった。2年生でコンピューターサイエンスに転向してからは学問に集中できたものの、3年生で研究の道に進むと「あなたには研究の才能がない」と言われ大きなショックを受けた。

 4年生の時には研究の世界から逃げ出そうと就職も考えた。それでも北京大学に進み、研究者として覚悟を決めたが、20年の卒業時には博士課程には進まず「アリババDAMOアカデミー」へ。羅さんは「DAMOアカデミーのような“光り輝く”チームへの参加は皆さんが思っているほど簡単なことではなく」、挫折やリトライを繰り返したという。

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