「芸人として撃沈し、初めて“ホストクラブ欲”が…」 「相棒」に出演の篠原ゆき子が明かす「自慢の黒歴史」
生まれて初めて湧いた「ホストクラブ欲」
Mの提案で、お笑いの聖地、中野でドサ回りをすることにした。スナックに飛び込みでお邪魔し、ママさんたちに頭を下げ、漫才して回った。7軒目あたりだったか、熟年カップルの男性客から「みんなどこで笑えばいいのか分かんないんだよ。お笑いっていうか芝居みたいだし」と困り顔で諭された。帰り道、ぬるい雨に打たれながら、私は「ホストクラブに行きたい」と言って泣いた。惨めさに押しつぶされそうだった。生まれて初めてホストクラブ欲が湧いた。そんな私にMはかっこよく言った。「よっしゃ、歌舞伎町行こう。客引き捕まえれば1000円くらいで入れる店あるらしいから」終電も無く、1時間歩き歌舞伎町に着くと、すぐにMの言った通り破格の客引きに会えた。彼の後についてキラキラした地下階段を降りていくと、ドアの前で言われた。「身分証明書の提示をお願いします」財布から免許証を出す私の背後でMが呟いた。「私持ってないや」「……」M宅に帰る道はもう涙すら出てこなかった。
翌朝、スナック男性客の「芝居みたいだし」という言葉だけ反芻し喜んでいる自分にフッと気付いた。隣でお笑いについて話すMの顔は無邪気でキラキラしていた。私も私の夢をちゃんと追おうと思った。こうして、ガス☆漏れ☆とんびの夏は終わることになった。
自慢の黒歴史
その後Mは移籍先の事務所で相方を見つけ、女芸人コンビとしてライブやテレビで活躍。私もたくさん笑わせてもらった。Mという相棒と過ごしたあの夏は、私の自慢の黒歴史だ。
【追記】このコラムをMにLINEで送ったら「お互い子育てとか色々落ちついたらまた“ガスとん”やらない?」という返信が来た。
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